2019年11月21日 第47号
「参る、参った」という言葉は「降参する」という意味と、「参ったなあ」というニュアンスの「困難な状況にある」という二つの意味に分かれる。今日は普段何となく口にする言葉を英語では何と言っているのかを紹介したい。
まず単に負けを認める意味での「参った」は“I”ではなく“You”を使う。
It’s your win. 「君の勝ち」
You won. 「負けたよ」
これがもっと古臭い言い方だと「降参」といったような言葉を使う。
I surrender. 「降参だ/お手上げだ」
“surrender”は自首すること、または自分に与えられていた特権や権利をあきらめる(破棄する)ことも表す。
剣道や柔道のような格闘技の場では当然「参りました」は自分が負けたこと、相手が上であることを意味するが、リング状形式のプロレスリングや総合格闘技では「タップアウト」が最近ではもっとよく使われるようになった。
Shortly after the last blow that gave him the most damage, the opponent tapped out. The match was over. 「最大のダメージを与えたパンチを受けた後すぐに相手はタップアウトした。試合は終わっていた」
ここでの「タップ」はマットを手でたたく様を表す動詞で、締め技などにあった相手が気を失う前にマットを手でたたいて降参するから来ている。
しかし同じタップアウトでも違った使い方をされるときがある。
I’m all tapped out. You guys go ahead to the city without me. 「俺は今ダメ。みんな俺抜きで街に出てくれ」
これは「疲れて果てた」という意味がある。(形容詞としての用い方)あるいは「お金を使い切ってしまった、一文無し」という意味でも取られる。だから「どうした金がないのか」みたいな返し方もできる。
ここでの「タップ」は生ビールやお酒を注ぐ際の給水口のことを指す。中身が空になった際に“tapped out”という。または「つけにしといてくれ」というその「付け」のことを“tap”というため、付けがたまりすぎて(よって借りが大きくなってしまい)“tapped out”が「一文無し」という意味に結び付けられることもある。
What do you have on tap for tonight?「今日はタップには何(のビール)がありますか?」
Sorry we are all tapped out of beer today. We have some bottled beer. 「今日はビール切れてしまったんですよ。ボトルビールならありますよ」
次回は「参ったなあ」の方の例を挙げることにする。
(文・イラスト 亀谷長政)