2016年8月18日 第34号
泉康雄
バラバラと耳をつんざく激しい音で眠りが覚まされた。これはヘイル(雹)だな、とすぐ感じた。ヘイルの襲来はもう慣れている。しかし、いつもよりかなり激しい音がしばらく続いた。最近は熟睡も4、5時間位で、明け方はウトウトしていることが多い。それでも真夜中に目を覚ますというようなことは久しくなかった。ヘイルの音を聞きながら「この辺りはいつものように大したこともないだろうが、これでは被害の大きい地域が出るかもしれないなあ…」と思っているうちにまた眠りについた。
翌日、ヘイルの被害が新聞の一面を取っていた。レスブリッジ方面はさほどでもなかったようであるが、カルガリーの方では、前日の午前中にはゴルフボールほどのヘイルが、そして場所によってはテニスボール大のヘイルが降ったという。テニスボール大のヘイルとはちょっと信じがたいなあ、と思った。僕のそんな疑いを消すように、被害を受けたエアーカナダの大型ジェット機の写真が載っていた。この大型飛行機は、トロントから144人の乗客を乗せ、カルガリーに到着予定だった。ところが、カルガリー国際空港に着陸寸前、突然のヘイルに襲われたという。パイロットはヘイルの襲来を受けて、急上昇、規則に従い機首をレスブリッジに向けたそうだ。レスブリッジ空港は国際空港ではない。気が付かなかったが、その写真は無事レスブリッジ空港に着いたジェット機の写真であった。パイロットの座る窓にヘイルによる数個の破損が見える。飛行機の窓、しかもパイロットの座るところの窓などは、日ごろの極度な風圧に耐えねばならないのであるから特製の窓であろう。それが破損したのだから、相当のヘイルであった訳だ。パイロットの機敏な処置により、144人の乗客と5人の搭乗員の命が助かった。その飛行機から無事降り立つ笑顔の母親らしき女性と、手を引かれた二人の子供の姿も写っている。消防士、警察官、整備係の人たちの姿も見える。小さな飛行場が、大きな仕事をした。
嫌な事件、恐ろしいニュースの毎日、ホッとする心温まる一面記事であった。