2018年8月16日 第33号
「家で倒れ、なんとか電話までたどり着き119番に電話はしたが、体が動かない」という状況で、何が起きるのでしょうか?今回は、「シーケア」という、海外在住者に代わって、日本の親の世話をしてくれる団体の方に聞いたお話を紹介します。この団体の情報は文末に。
家で転倒!119番には電話したが…
119番に電話すると、救急隊がやってきます。呼び鈴を押しても、ドアをノックしても誰も出てこないと、「中で意識を失っている」と推測し、窓やドアをこじ開けて入っていくそうです。
倒れている人の応急手当てをすると同時に、「この人が誰か」を知るべく、カバンやジャケットから財布を探したり、引き出しやタンスの中を見て、身分証明になる保険証などの書類を探すそうです。「田中さん」のお宅からの通報だったとしても、倒れている人が田中さんとは限らないし、田中さんであっても、母、長女や次女、おばなど、どの田中さんなのかわからないからです。
シーケアの方の話では、「必要情報がわかるまで、家(や)探しする」とのこと。刑事ドラマのごとく、何人もがあちこち開けて探すというのです。
一刻を争うような時に、と思われるでしょうが、身元も知れず、持病や摂っている薬もわからない状態では、適切な治療や投薬はできないのです。下手をして誤診や誤治療になってはいけません。
救急隊が必要な情報とは
・本人の名前
・住所
・電話番号
・生年月日
・性別
・血液型
・本人の顔写真
・かかりつけの医師や病院の名前と電話番号
・摂っている薬
・持病やアレルギーの有無
・二人以上の緊急連絡先(名前と続柄、電話番号、住所、メールアドレスなど)
・すでに在宅の介護サービスを受けている場合は、ケアマネージャーや事業所の名前
冷蔵庫の扉に貼る
以上の情報を一枚の紙に書いて、一番上に大きく、「救急医療情報」と書き、日付と、本人の署名や判子を押して、冷蔵庫のドアに貼ってください、ということです。そして、玄関ドアの内側に「救急医療情報が冷蔵庫にあります」というメモを張っておくとなおよいそうです。
この活動は、市町村などの自治体と消防・医療機関が連携して、全国的に広めようとしているもので、なぜ冷蔵庫かというと、目につきやすいし、どの家にもあるからだそうです。
個人情報なので、人目に付くところに貼りたくない…と思われる方は、冷蔵庫の扉には「中に救急の場合の医療情報があります」という張り紙だけして、紙は透明な容器に入れてわかりやすくマークしておくとよいでしょう。
外出時にも情報は携帯を
倒れるのは家の中だけとは限りません。駅の階段、道を歩いているとき、など、外出先で転んでしまうことだってあります。
そんな時でも、以上のような情報がカバンに入っていると迅速な治療が受けられます。財布に入るくらいの小さな紙でいいので、書いて入れておきましょう。
親に聞きづらいときは
こういう情報はいきなりでは聞きづらいかもしれません。そんな場合は、帰国時に、「家で転んだら、こんなことになるんだって。だからちょっと教えて…」という風に話を切り出して、親御さんから医者や薬の話を聞くといいと思います。
代行サービス「シーケア」
「海を越えるケア・シーケア」は、海外在住者のために介護代行サービスを提供している、特定非営利活動法人です。高齢者を訪問し支援プランを立てたり、介護サービス利用の手続きや、施設の調査、見守りサービスなどをやってくれます。
www.seacare.or.jp
角谷 紀誉子
著者略歴:ワシントン州認定ソーシャルワーカー。サクセス・アブロード・カウンセリング代表。留学生・駐在員・国際結婚家族などを対象に心理カウンセリングを提供してきた。著書に「在米心理カウンセラーが教える、留学サクセスマニュアル」(アルク社)、「親が読む、留学サクセスマニュアル」など。2017年、日本の介護システムをわかりやすく解説し、ケーススタディを用いて日本の親に何ができるかを具体的に紹介した、「遠隔介護ハンドブック」を出版。アマゾンUSAにて発売中。秋にバンクーバー「日本語認知症サポート協会」でセミナー予定。www.successabroadcounseling.com メールはThis email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.