2017年5月4日 第18号

 更年期障害の治療法は多岐にわたる症状もさることながら多くの診療科にまたがった疾患群であり不定愁訴症候群とも呼ばれ、幅の広い治療法がなされています。従って更年期障害の治療法に関しては、一般的な対症療法的な治療法に加え、ホルモン療法および漢方療法が一般的になされていますので、日を改めて順次ご紹介して参りたいと思っています。

 更年期においては全体の9割もの人が身体の変調を感じているといわれています。よくみられる症状は、顔が熱くなる、身体が冷えやすい、汗をよくかく、疲れやすい、吐き気、めまい、頭痛、手足の痛み、腰の痛み、肩こり、息切れ、動悸が激しい、眠りが浅い、寝つきが悪い、気分が滅入る、落ち込む、怒りっぽい、不安、孤独感、耳鳴り…などですが、数え上げればそれこそ限りないほど多く上ります。これらのすべての症状を併せ持つ人は勿論滅多にはおられませんが、またこれらのうち1つだけしか症状がない人も滅多にありません。2~3の症状に悩まされて不快に思って生活なさっている方々が圧倒的多数ということになります。これらの症状は更年期障害にだけみられる症状ではないことがとても大切で重要なことです。例えば身体が冷えやすい、汗をかく、疲れやすい、息切れ、動悸などは確かに更年期障害によくみられる症状ですが、同時に甲状腺の機能亢進や機能低下、貧血症や心血管系の障害でも現れる症状ですし、気分が滅入る、落ち込む、怒りっぽい、不安、孤独感、なども更年期障害では普通によくある症状で、空の巣症候群とも言われ、子供が巣立ってゆき、夫の定年を迎え、肌の艶が衰え始める頃に見受けられますが、精神科的な疾患でもみられる症状です。これらの症状が基礎疾患に由来するものであるなら当然診断による治療がなされます。問題となるのは、いくら検査を行っても診断に至らない場合が出てきます。これらを総称して不定愁訴症候群などと呼ばれている疾患群なのです。症状は似ていても基礎疾患が診断できなければ、ある意味では一安心といえるのかもしれません。しかし、これらの症状と毎日毎日付き合って行くのも並大抵の苦労ではありません。仕事や家事に熱中していると症状を忘れ、ひと段落すると症状が気になってくる場合が多く、ついつい医療機関に行きそびれてしまう方も多く見受けられます。買い物をしてお惣菜を手に帰宅し食事の用意をし始める頃からだんだんと症状が気になり始めます。受診しようにも時間外で救急病院受診でもないし…といって治ってもこない…ひとつ、提案が有ります。とにかく思い切って受診してみて下さい。対症療法的な薬剤が処方されたとしても、服用してみてください。随分、症状が緩和されて仕事も家事も見違えるほどに改善しますから。なんで今まで我慢していたのだろうと思えてきます。貴女が今まで我慢しながら作り笑顔を振りまいて仕事をしていても周りの人達は貴女を評価するどころか気の毒に思っていることすらあるのです。今までの自分の姿を冷静に振り返ることができるようになると、もっと早いうちに治療をしておけばよかったと思うに違いありません。しかし、更年期障害にみられる症状の中には同じような症状でも実は重大な病気が隠れていたり、時には悪性の病気が隠れていたりします。

 たまたま更年期という時期に発症した場合ですと鑑別がとても難しく診断に時間がかかったり特殊な検査が必要なこともありますので、異常に気がついたら早めの受診を心がけたいですね。毎日毎日病院へ行かなくては…と思いながら毎日を過すより、思い切って受診して、気持ちをスッキリさせてみては如何ですか?素晴らしい明日が待っていますよ! 

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。