2017年4月6日 第14号

 ご近所の方との楽しいオシャベリやティータイムのときに急に顔が火照ってみたり、急に胸がドキドキして動悸を感じたりして、自分でもビックリしたことに思い当たる事はありませんか?ハッキリとした原因がないのに、ほんのなんでもないことにイライラして、ご主人や子供さんに辛い思いをさせた事、その後でクヨクヨと悩んだ記憶は?悩みすぎて鬱の状態に陥ったり、それとは全く正反対に楽観的になってみたり…でもいつもと違った自分に気がついた時には、チョッとその場に立ち止まってみましょう。一生懸命に歩んできた人生をチョッとその場で立ち止まってみましょう。一息入れるのです。大体50歳後半ぐらいの年齢に達しますと社会的には指導的な立場になって責任も一層重くなってきます。ストレスも溜まるばかりです。朝に晩に鏡に向かうとき、少しずつ肌の艶やシワが気になり始めるのもこの時期です。ご主人はいかがですか?そろそろ定年を迎えようとなさっていませんか?子供さんたちは如何かですか?そろそろ独立なさる頃でしょうか?…大体こういった事が一度に重なってくるのがこの時期なのです。でも、こうも考える事ができませんか?肉体的にも精神的にも社会的にも経験と実績が一層深まって、堂々とした円熟した風格を持った人間に大きく変わろうと準備している時期なのだと。その変わろうとしていてうまく歯車がかみ合っていないだけのことなのです。こういった転換点はいってみれば誰でも通る“関所”みたいなものです。

 とはいっても、更年期障害の程度は個人差が激しく、殆ど気がつかない程度の方から治療を必要とする方まで様々な対応を要します。男性中心の社会では、女性の社会的地位や権利さえも軽んじられて来たので女性の更年期における肉体的・精神的変化など理解されるはずもなく、表面だって考えようともされなかった事柄でした。でも現在では女性中心の社会と言っても良いほど女性の感性や思考や能力が必要とされている時代です。更年期障害による辛い症状をひたすら我慢することなど、まさに大きな社会損失と思いませんか…治療法としてはカウンセリングによって更年期障害それ自体を知ることによって不安定な感じ方・考え方・行動の仕方などが矯正されてくることも多く見受けられます。もちろんカウンセリングのみに限らず薬物の投与が平行して行われます。軽い睡眠剤や安定剤などを必要なときにだけ服用する対症療法や、症状が持続する場合には自律神経系の高ぶりを抑えたり安定させる方法や向精神薬などが用いられます。また、薬物療法の中でも東洋医学的な治療法も脚光を浴びています。一般的に漢方薬は自然の生薬を原材料として調合されますので、においや味に抵抗がなければ試してみる価値はあると思います。もう一方の考え方は、これらの不調の原因はホルモンの減少によるものなので、ホルモンの補充療法が良いというものです。ただしこのホルモン補充療法に関しては現在もなお議論がなされており、発癌性をめぐる話題には、さらに熱を帯び活発な意見が交わされています。

 もしも貴女が怒りっぽかったり、落ち込みやすかったり、イライラしているとすれば、貴女の周りの人たちはきっと貴女にそのようなレッテルを貼ってしまうことでしょう。いくら貴方が温厚で優しくて思いやりあふれる有能な人間であったとしても、更年期障害という“異常事態”と理解してくれることは決してないのです。家族や近隣の人達のみならず、会社の同僚や仲間たちと付き合うときには、本来の貴女の姿で触れ合いたいものです。もしも“いつもと違う自分”を感じたり気がついたら、勇気を出して医療機関を受診してみて下さい。きっと本来の自分が取り戻せるだけでなく、もっと、もっと明るく素敵な未来が待ち受けていますよ。

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

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