2016年10月6日 第41号

子宮癌は婦人科癌の中で最も頻度の高い疾患です。以前は子宮癌といえば子宮頚部癌を意味するほど高い頻度(95%)でした(体部癌は5%)が、近年では体部癌の頻度が上昇し、子宮癌全体の30%にも及ぶ頻度と言われ、決して稀な疾患ではなくなっています。頚部癌と体部癌の大きな違いは子宮頚癌はヒトパピローマウイルス(HPV)感染との関連が深く、発症年齢が若年層に多く見られるのに反し、子宮体部癌は女性ホルモンのエストロジェン(卵胞ホルモン)の影響の蓄積が関与している可能性が高いので、そのため罹患率は40歳代後半から増加し始め50〜60歳代にピークを迎えその後減少します。

 確立されたリスク要因として、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、など婦人としての既往歴に留まらず、肥満、糖尿病、高血圧、更には家族歴として乳癌、大腸癌、子宮体部癌などとの関連が挙げられています。子宮体部癌の症状としては一般的によく見られるものとしては不正性器出血が挙げられます。月経でない時に出血する、或いは、全く不定期に出血し、生理が一緒に重なると出血日数が長くなる、また、下腹部が痛む、排尿時に不快感を伴うなどの症状が挙げられます。

 診断は細胞や組織の一部を採って検査を行います。子宮体部癌は子宮体部に発生する悪性腫瘍ですので子宮内膜を採取する必要が有ります。細胞や組織によって診断がなされ、必要であれば超音波断層法による検査や、血液検査が追加される事も有ります。いずれにせよ、子宮体部癌と診断されれば次には癌の広がりや周辺臓器、他臓器との関連などを検査することが必要になります。

 癌の広がりによっては、その後に行われる治療法の選択に大きな影響を与える事になります。即ち、手術療法(手術術式は選択される)、抗癌剤療法、放射線療法、ホルモン療法を決める際にどうしても必要となります。どのような疾患においても早期発見、早期治療がなされれば自ずと予後は良い結果がもたらされます。子宮体部癌も全く例外ではなく癌が初期(病変部位が子宮内膜に留まっている)であれば5年生存率は大変高く95%(ほぼ100%という報告も有る)以上とされています。

 子宮体部癌の概略について述べて参りましたが、子宮体部癌のリスク要因のある方は(子宮体部癌にかかり易い可能性を有する方)はチョッピリ心配になる話題だったかもしれませんが不正性器出血や閉経後出血をきたす疾患は必ずしも子宮体部癌とは限りませんしホルモンの異常といってもホルモンは卵巣だけで単独に機能している訳では有りません。様々な臓器と密接に連携をもって有機的に繋がっていますので、ホルモンの異常=不正性器出血・閉経後出血=子宮体部癌と即座に方程式が成り立つと考える必要など全くありませんが悪性腫瘍の可能性が潜在している事も一応考慮しておく必要はあるでしょう。

 肥満や糖尿病、高血圧症等の既往のある方や家族歴として乳癌、大腸癌、子宮体部癌の方々がおいでになる方は不安感に苛まれるかもしれませんが、決して恐怖心に苛まれる必要など全くありません。ただ潜在性を指摘されている事例報告が多く見られますので、極端に神経質になる必要など全く有りませんが、あまりにも無防備で毎日を過す事にも抵抗を感じます。もしもハイリスク群と考えられるなら、医療関係者とよくご相談の上必要な検査やアドバイスなどをお受けになることも不安の払拭に有益な手段だと思います。御自分の健康を守り、維持して豊かな毎日を過ごしましょう。

 


杉原 義信(すぎはら よしのぶ)

1948年横浜市生まれ。名古屋市立大学卒業後慶応大学病院、東海大学病院、東海大学大磯病院を経て、杉原産婦人科医院を開設。 妊娠・出産や婦人科疾患を主体に地域医療に従事。2009年1月、大自然に抱かれたカナダ・バンクーバーに遊学。

 

 

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