2020年1月9日 第2号

 国際連合(UN)の人種差別撤廃委員会(CERD)が、カナダで進行中の大型プロジェクト3件について、関係する先住民族との合意に至っていないなどの理由で建設を中止するよう要請した。

 中止を求めたプロジェクトは、アルバータ州からブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市までオイルサンドを運ぶトランスマウンテン・パイプライン拡張工事、BC州の電力発電のために建設中のサイトCダム、液化天然ガス(LNG)をBC州北部沿岸まで送るコスタル・ガスリンク・パイプライン。

 UNの委員会は昨年12月に、これら3件のプロジェクトは、影響を受ける先住民族の、自由意志で、事前に、明らかな形で同意されるべきだが、そうした同意がないまま事業が承認され、工事が始まったことは懸念されると発表している。さらに司法によって強制的に先住民族の行動が妨害されているとも語っている。

 トランスマウンテン・パイプライン拡張工事は、連邦政府が買収し国営企業として現在工事が再開されている。今回の件では、工事は安全にかつ先住民族とのコミュニケーションも大事にしながら工事を進行していると主張している。同事業は、先住民族らの訴えによって一度裁判所が工事停止を言い渡し、再度環境問題対策と先住民族との話し合いを経て承認され、工事が進んでいる。しかし、BC州には納得していない先住民族もいる。

 サイトCダム建設工事を進めているBC州の電力会社BCハイドロは、今回の件を受けて2007年から関係する先住民族と話し合いを続け適切に対応していると発表している。

 UNの委員会は以前はサイトCダムのみについて問題視していたが、今回トランスマウンテン事業とコスタル・ガスリンク事業を加えた。

 UN人種差別撤廃委員会(CERD)は、国連の人種差別撤廃条約(正式名称:あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)に基づき設立された独立した人権団体。条約には88カ国が署名、カナダも署名国のひとつ。委員会は18人の専門家で構成されている。

 今回の委員会の要請に対し、アルバータ州政府が反応した。アルバータ州エネルギー大臣は、カナダ国内の天然資源に関する巨大プロジェクトについてはカナダ国内で選挙によって選ばれたリーダーたちによって決定されることであり、国連のように選挙によって選出もされていなければ責任もない機関が口をはさむべきことではないと反論している。

 

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