2019年11月14日 第46号

 カナダの人気スポーツ番組CBCサタデー・ホッケーナイト・イン・カナダで長年コメンテーターを務めていたドン・チェリー氏が11日、番組を降板することが分かった。放映権を持つスポーツネットが伝えた。

 チェリー氏は、9日に放送された同番組で自身が持つコーチーズ・コーナーでの発言が問題視され、カナダ中で物議を醸した。

 チェリー氏は11月11日にリメンバランス・デーを迎えるに当たり、最近胸に赤いポピーの花をつけている人を見かけなくなったことを嘆いた。その中でトロント市内ではポピーを付けている人を見ることすらないと語り、移民者と名指しして「あなたたちは、カナダでの生活を楽しんでいるだろう。だったら少なくとも2ドルくらい払ってポピーを買ってもいいのではないか」と述べ、「彼ら(退役軍人)の働きによってあなたたちの幸せな生活があり、カナダで楽しんでいられるのだから」と続けた。

 しかし、このコメントが議論を巻き起こした。あたかも新移民だけが退役軍人に敬意を払っていないかのような言い方をしたからだ。カナダに移民して来て幸せに暮らせているのは誰のおかげなのだと言わんばかりの発言に、ホッケー関係者だけでなく政界からもメディア関係者からも批判の声が相次いだ。

 カナダ放送倫理委員会は、苦情を受けるサイトにコメントが殺到しすぎてこれ以上受けられないと、異例の苦情受付停止を行った。

 そしてついに11日、奇しくもリメンバランス・デーのその日に、スポーツネットがチェリー氏の番組降板を発表した。

 同日チェリー氏はトロントでラジオ番組に出演しコメントの真意を説明。「あなたたち」という中には、すべての人が含まれると釈明。「全員がポピーを付けるべきだという意味で言った」と語った。

 チェリー氏は同番組を38年間続けてきた。CBCで始まったコーチーズ・コーナーは現在でもCBCで放送されているが、放映権がスポーツネットに移ってからは出演者などの決定権はスポーツネットが持っている。

 今回の件についてスポーツネットは、10日にはチェリー氏の発言を謝罪。11日には「ドン・チェリー氏と話し合った結果、チェリー氏が番組を降板することが適切と判断した」と発表した。

 

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