2019年10月24日 第43号
カナダで21日、第43回連邦総選挙の投開票が行われ、ジャスティン・トルドー党首率いる与党自由党が最多議席を獲得して、自由党政権の続投が決まった。ただ単独過半数を獲得できなかったため、少数派政権となる。
トルドー自由党は今回の選挙で厳しい戦いを強いられた。2015年前回選挙では、トルドー旋風を巻き起こし、圧勝で保守党から政権を10年ぶりに奪回した。
しかしその期待とは裏腹に、政策不履行やスキャンダルが相次ぎ、支持率はじりじりと下がり始めた。決定的な打撃となったのは、今年2月に発覚したSNCラバランスキャンダル。
ケベック州にある大手建設会社SNCラバラン社がカダフィ政権下のリビア政府に賄賂を贈ったとされる贈賄容疑の訴追を、司法取引によって回避するよう当時のジョディ・ウィルソンレイボールド司法長官にトルドー首相や側近が圧力をかけたとの疑いが向けられた。
これにより支持率は一気に落ち込んだ。しかしトルドー首相は、不正行為はなかったと現在でも主張を変えていない。倫理委員会からは圧力があったとの調査報告が発表されている。
また選挙戦に入ってからは、トルドー首相がブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで高校教師をしている時に顔を真っ黒に塗ってコスチュームパーティーに参加していた写真が雑誌に掲載された。これには各方面から非難の声が相次いだ。
こうしたことから自由党の支持率が落ち込んだが、保守党も引き離すほど支持率は伸びず、投票日直前には両党とも30パーセント前半で争っていた。
投票前の予測では保守党政権の政権奪取の可能性もいわれていたが、オンタリオでの議席を伸ばせなかったことが響き、自由党を倒すまでには至らなかった。
新民主党(NDP)は党首討論会で頭角を現したジャグミード・シング党首が後半猛追したが、議席を減らし野党第3党に。一方で同じく討論会で存在感を見せたケベック連合党(BQ)イヴ-フランソワ・ブランシェ党首は、BQ旋風を巻き起こし大幅に議席数を増やした。
グリーン党は初めてBC州以外で議席を獲得、過去最高の3議席となった。カナダ国民党(PPC)はマキシーム・ベニエ党首が落選し唯一の議席を失った。
注目されたBC州バンクーバー・グランビル選挙区は、無所属で出馬したウィルソンレイボールド元司法長官が僅差ながら自由党を突き放して当選した。
選挙結果は、自由党157(177)、保守党121(95)、BQ32(10)、NDP24(39)、グリーン党3(2)、無所属1(9)、PPC0(1)。カッコ内は選挙直前の議席数。選挙前の空席は5議席。総議席数は338議席、過半数を取るには170議席が必要だった。
議席数では自由党が最多となったが、得票数は保守党が34・4パーセントと自由党33・1パーセントを上回った。BQは7パーセント、NDP15・9パーセント、グリーン党6・5パーセントだった。