2019年8月29日 第35号
ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の秋の風物詩ともいえるサーモンの遡上だが、2019年は受難の年になりそうだ。
カナダ漁業海洋省は22日に太平洋サーモンについての公式な報告書を発表、2019年にBC州の川に戻ってくるサーモンの数は約60万匹と前回予測の500万匹から大きく下方修正した。
サーモンの遡上は年々減少しているという。その大きな要因の一つが環境の変化で、特に地球温暖化が大きく影響していると報告書で警鐘を鳴らしている。
北太平洋でヒートウェーブによる暖流を引き起こす現象が太平洋サーモンのエサとなるプランクトンに大きな影響を及ぼしていることが要因の一つという。BC州やユーコン準州で大気や海水の温度が上昇し、降水パターンの変化が淡水生物の生態系を変化させていると報告している。
加えて今年は、フレーザー側のビッグバー近くで大規模な土砂崩れが発生し、サーモンの遡上をせき止めている。現在も毎日80人態勢で、せき止められた下流から上流へ、ヘリコプターなどを使ってサーモンを移動しているが、追いついていない状況で、現在は約27万匹のサーモンが下流でせき止められているという。
一部サーモンが自力で遡上し始めたとの報告もあるが、22日の記者会見でジョナサン・ウィルキンソン漁業海洋相は「間違いなく危機的状況」と語り、100人態勢で解決に臨むと約束した。
ウィルキンソン漁業相はこの日、BC州サーモン復活のための5件のプロジェクトに270万ドルを支援することを発表。さらに、温室効果ガス削減はサーモンの復活のためにも喫緊の問題とし、自由党政権も真剣に取り組んでいることを強調した。しかしサーモン漁を生業としている先住民族からは、すでに生活に支障をきたすレベルにまで達している状況であり、連邦政府やBC州政府にはフレーザー川の状況について緊急事態宣言を発令すべきとの要求が出ている。さらに、自由党政権はトランスマウンテン・パイプラインを買収し、その上、拡張工事まで承認して温室効果ガス削減に取り組んでいると言っても説得力がないと批判も噴出している。