2019年7月18日 第29号
ケベック州モントリオール空港で2018年5月、着陸態勢に入っていた2機の飛行機がニアミスを起こした事件で、カナダ運輸安全委員会はその調査報告書を先週公表した。それによると、ニアミスの原因は管制官不足と、そのために生じた管制手続きのミスだった。年々増加する航空需要から、パイロット不足の問題がメディアで時々取り上げられるようになったが、その航空機の飛行をコントロールする管制官の不足も、実は現実のものとなっている。
この日、トロントからのエア・トランザット485便はモントリオール空港の北側を東向きに飛行、空港を通り越してから右に180度旋回して空港に正対し、2本ある並行滑走路のうち北側の滑走路に着陸するよう、管制官から指示を受けた。同じ頃、モントリオール市の北東100キロあまりにあるトワ=リビエールから同空港に向かっていた6人乗り小型双発機は、空港北東側から南側滑走路に向かうよう指示を受けた。
これらの指示に従い飛行を続けていた2機は、空港の北東約33キロの地点で異常に接近した。その距離は垂直距離で約150メートル、水平距離で3キロメートルだった。両機ともスピードは250キロ以上で、状況によっては約10秒で衝突する距離だった。
調査報告書は、空港周辺の空域を管理するのに6人の管制官と1人のスーパーバイザーが必要なところ、当時は3人の管制官と1人のスーパーバイザーが管制業務を行っていたことを明らかにしている。空港周辺は6つの空域に分割され、通常ならばそのひとつずつに専属の管制官がついて、空域内を飛行中の航空機に指示を出すことになっている。しかしこの日は1人の管制官が複数の空域を受け持っていたため、1人が担当する数が増加するなど、業務量が増えていた。
このため、小型双発機が空港に接近して次の管制空域に差し掛かった際、次の空域を担当する管制官への引き継ぎが行われなかった。結果として次の空域の管制官は小型双発機の存在と、その飛行ルートがエア・トランザット機と衝突するコースにあることに気がつくのが遅れてしまった。しかし、このことに気がついた管制官は衝突を回避するようにルートの変更指示を出し、最悪の事態は避けることができた。
なお報告書は、こうしたインシデントの再発を防ぐような対策については、特に言及していなかった。