2019年7月18日 第29号

 カナダ造幣局(Royal Canadian Mint)は今月はじめ、「カナディアン・ランドスケープ」と名付けた、カナダの国土の形をした50ドル銀貨を発行した。

 純銀製で、重さは100グラム。また各州と準州の形に合わせ、それを代表する鳥や哺乳類が白、黒、赤の塗料を用いて描かれている。例えばブリティッシュ・コロンビア州には、先住民の間で精霊のクマ(スピリットベア)と呼ばれているシロアメリカグマ(kermode bear)のデザインが用いられている。またアルバータ州はビッグホーン(bighorn sheep)、ノバスコシア州はミサゴ(osprey)となっている。

 額面は50ドルだが、コレクターアイテムとして扱われるため、実際の販売価格は339・95ドルとなる。また発行枚数は2千枚。

 この銀貨のデザインは、何年も前にオンタリオ州オタワ市在住のグラフィック・デザイナー、アリシャ・ジルーさんが考案したもの。カナダ建国150周年に合わせて2色版の「カナディアン・ランドスケープ」を作成、オンライン上で公開していた。

 そんな彼女のもとに、造幣局からの電子メールが突然届いたのは昨年のことだった。いわく銀貨のデザインとして用いるため、「カナディアン・ランドスケープ」の版権を買い取りたいとのことだった。もともと、このデザインは自分のものの見方を表現した、個人的な作品のつもりだったと、取材に語るジルーさん。しかし造幣局は特別な記念硬貨の図柄として、彼女のデザインにとても興味を持ったようだ。

 各州や準州のデザインは、簡単だったものも難しかったものもあったと話すジルーさん。例えばヌナブト準州をカナディアン・エスキモー・ドッグ(Canadian Inuit Dog)で表現するアイデアはすぐに思いついた。逆にケベック州(シロフクロウ | snowy owl)をどう表現するかが最も苦労したという。オンタリオ州もケベック州に次いで悩んだ州で、最終的に彼女はハシグロアビ(common loon)を用いることにした。

 そのほかユーコン準州はワタリガラス(raven)、ノースウェスト準州はシロハヤブサ(gyrfalcon)、サスカチワン州はオジロジカ(white-tailed deer)で表現されている。またマニトバ州がヘイゲンバイソン(plains bison)、ニューブランズウィック州がアメリカコガラ(chickadee)、プリンスエドワードアイランド州がアオカケス(blue jay)、ニューファンドランド・ラブラドール州がウッドランド・カリブー(woodland caribou)となっている。

 なお世界的に見ると、オーストラリア造幣局も国土の形をした記念銀貨を発行している(額面は1ドル)。

 

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