2019年6月20日 第25号

 ユーコン準州中西部の、人口1400人弱の町ドーソンシティにあるホテルに、凍傷のため切断された足の親指が寄付された。

 この足指、もともとはイギリス海兵隊の隊員だったニック・グリフィスさんのものだった。イングランド北西部の都市マンチェスターの北に位置するボルトン在住のグリフィスさんは2018年3月、同準州で行われたレース、ユーコン・アークティック・ウルトラに参加した際に、凍傷で足指3本を切断する治療を、同準州の州都ホワイトホースの病院で受けていた。このレースは徒歩かクロスカントリースキー、またはマウンテンバイクで、世界一過酷といわれる犬ぞりレース、ユーコン・クエストの1000マイル(約1610キロメートル)のルートのうちの、ドーソンシティまでの483キロを走破するというもの。

 ホワイトホースの病院に滞在中、グリフィスさんは看護師からドーソンシティのダウンタウン・ホテルに伝わる『サワー・トウ・カクテル』の存在を知らされた。これは、同ホテルのバーで提供される、ミイラ化させた人の足指を入れたショットグラスで提供されるウイスキーのこと。このカクテルがメニューに登場したのは1973年で、このカクテルを飲んだ人は名誉ある『サワー・トウ・クラブ』への入会が認められる。

 グリフィスさんも退院後このホテルを訪れ、このカクテルに挑戦、晴れて『サワー・トウ・クラブ』に入会した。グリフィスさんは当初切断された足指を全部寄付するつもりだったが、親指だけをイギリスの自宅から郵送した。先々週にこれを受け取ったダウンタウン・ホテルの総支配人アダム・ジャールさんによると、足指は医療用アルコールで保存されており、良好な状態だという。そしてこれから、この足指を岩塩に漬け込みミイラ化させ、ゆくゆくは『サワー・トウ・カクテル』に使用していく予定だと取材に話していた。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。