2019年6月6日 第23号

 川崎市多摩区の私立カリタス小学校のスクールバス乗り場で5月28日、バスに乗り込むところだった児童や保護者が包丁を持った男に切り付けられ、20人が死傷する事件が起きた。

 この悲惨な事件は瞬く間に世界の耳目を集めたが、この報に接した、同校設立のもととなったカナダの修道女会が、被害者とその遺族に哀悼の意を表すコメントをメディアを通じて発表した。

 この修道女会は、ケベック州ケベック市にあるカトリック系宗教団体、ケベック・カリタス修道女会で、約150年の歴史を持つ。太平洋戦争敗戦後の困窮した日本を支援するため、宣教師を日本に派遣するよう求めるローマ法王の呼びかけに応じた同修道女会が、1953年に3人の修道女を日本に送ったのが、私立カリタス学園設立のきっかけとなった。

 1960年には学校法人を設立、61年に修学院と女子中学高等学校を開設。その後幼稚園と小学校、さらに女子短期大学を順次開設していった(女子短期大学は2017年に閉鎖)。

 川崎市のカリタス学園を今までに2回訪れたことがある、カリタス修道女会のシスター、モニーク・ジャルベスさんが同学園を最後に訪れたのは約2年前のことだった。ジャルベスさんが今回の事件を知ったのは、同僚が偶然インターネット上でこのニュースの第一報を見つけたことだった。事件現場の地名に聞き覚えがあった彼女は、それが自分たちの学校でないことを祈ったと取材に話している。現場付近は閑静なところで、こんな事件が起こるわけがないと自分に言い聞かせていたものの、不安は現実のものとなってしまった。唯一の救いは、現場に居合わせた人々が次々と救いの手を差し伸べたことだったと語るジャルベスさん。

 それまでも登下校時の送迎など、児童の安全については十分考慮されていたと指摘する彼女は、今後児童らが安心感を取り戻せるようにするのは、並大抵のことではないと案じている。しかし現地にいる同修道女会のシスターたちは、学園がこの事件を乗り越えられるよう全面的に支援していくと話していた。

 

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