2019年5月23日 第21号

 カナダを代表するポップスター、ジャスティン・ビーバーのミュージック・ビデオが撮影されたアイスランドの渓谷で、現地を訪れるファンのマナー違反などで荒れていく状況に、当局者が頭を悩ませている。

 この場所は、アイスランドのフィヤズラウルグリューブル渓谷。ジャスティン・ビーバーが2015年にリリースしたアルバム『パーパス』に収録されている『アイル・ショウ・ユー』のミュージック・ビデオがここで撮影されるまでは、あまり知られていない場所だった。

 1億500万人以上のツイッターのフォロワーのほか、インスタグラムでは1億1200万人以上のフォロワーを擁する彼のビデオは瞬く間に世界中に広まり、その再生回数はこれまでに4億4000万回を超えている。このビデオの中でジャスティン・ビーバーは氷河の浮く湖で泳いだり、コケに覆われた斜面を転がり下り、途中でコケを根こそぎむしっていたりしているほか、せり出した崖の上の岩から足を投げ出して座っていたりしている。

 その壮観な大自然の風景も相まって、以来この地を訪れたビーバーファンの数は100万人を下らないと、アイスランド環境庁はみている。撮影当時は立ち入り禁止のロープや看板などはなかったものの、想定外の人数の観光客が自撮りなどのために縦横無尽に歩き回ったことから、植生へのダメージが顕著になった。そもそも北極圏に近く溶岩性の土地や氷河といった繊細な環境にあるため、その植生はわずかなダメージでも一帯の植物群が破壊されてしまう。

 そのため現在では自然保護官を配置し厳しい立ち入り規制を行っている。今年に入って渓谷への立ち入りが許可されたのは5週間だけで、現在は閉鎖中となっている。それでも自然保護官をなんとか説き伏せて渓谷へ行こうとする観光客は絶えない。保護官のひとりハンナ・ヨハンスドッティルさんは先日、アラブ首長国連邦のドバイまでの往復航空券と引き換えに、見て見ぬふりをしてくれと頼まれたことを取材に語っていた。

 このブームに追い打ちをかけるかのように、やはりこの渓谷をはじめ近くにあるスコゥガル滝や、スナイフェルス氷河でもロケが行われた人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終シリーズがTVで放映され、またしても渓谷に注目が集まってしまった。

 グードミュンダー・インギ・グードブランソン環境大臣はメディアの取材に対し、世界中の人に影響力を持つような人は、自らの行動が引き起こす結果をよく考えるよう、求めている。

 

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