2019年5月9日 第19号
サスカチワン州最大の都市サスカツーン市に住むタトゥーアーティストのクリス・ウェンゼルさんは生前、カナダ中を旅する夢を妻のシェリルさんとよく語り合っていたという。
しかし昨年10月にクリスさんは病気がもとで死亡、2人の夢はかなわなくなってしまった。その代わりにクリスさんが言い残したことは、自分の体に彫り込まれた見事なタトゥーを携え、カナダを巡ってくれというものだった。
享年41歳のクリスさんの遺体から切り取られた両腕、背中、および太股の皮膚は、アメリカにある会社に送られ保存処理がほどこされた。そして何カ月かの処理が完了した今月、シェリル・ウェンゼルさんは鮮やかな色の見事なタトゥーが彫り込まれた、亡き夫の皮膚を飾った4つの額を受け取った。
この作品は、同市で開催されたタトゥー博覧会を皮切りに、バンクーバーでも一般公開された。そのあと、東海岸までのツアーをウェンゼルさんは計画している。「亡き夫の遺志を実現し、彼が誇りに思っていたことを目の当たりにすることが、私と子供たちに、前に進む力を与えてくれる」と取材に語るウェンゼルさん。生前、夫からこの話を持ちかけられた時、ウェンゼルさんは最初、冗談かと思ったと言う。彼女の家系は元々、毛皮猟師だった。
夫の遺志とは言え、保存加工したヒトの皮膚を展示することには賛否両論様々な反応があったとウェンゼルさん。しかし彼女は、自分は常に人々に一歩踏み出す勇気を与える存在であったし、今回のウェンゼル家の物語が、人々を他人に対して敬意を抱けるような励みになることを願っていると、取材に語っていた。