2019年2月28日 第9号

 ブリティッシュ・コロンビア州政府の情報セキュリティーを担当する人物が、大学で行われた公開セミナーで、セキュリティー上の観点から非公開であるべき情報を公にしていたと、メディアが報じている。

 ブリティッシュ・コロンビア州大学(UBC)で開催された「情報セキュリティとプライバシー」と題されたセミナーに出席したのは、BC州情報セキュリティー局のエグゼクティブ・ディレクター・ゲーリー・パーキンス氏。公開セミナーであることから主催者は、パーキンス氏の講演内容はすでに一般に公開されている内容だと思っていた。またそのため、約170人のセミナー参加者に関するセキュリティーチェックもなされなかった。

 しかしメディアが同州市民サービス省から入手したパーキンス氏のプレゼン資料には、サイバー対策捜査に支障を及ぼす情報が含まれているとして、判読できないよう修正した箇所があった。内容が隠されたのは、サイバー攻撃を仕掛けたコンピューターのIPアドレスのほか、コンピューターネットワークに接続した個々の機器に割り振られた番号、また頻繁にサイバー攻撃が仕掛けられた各国政府の機関のリストなど。同省は、捜査当局に悪影響を及ぼすとみなされた場合には情報を非公開にできるとした、情報公開ならびに個人情報保護法の特例に基づいた処置だと説明している。

 なおこのセミナーのスポンサーは、中国の大手通信機器メーカー、ファーウェイだった。この企業に対し、カナダ安全情報局(Canadian Security Intelligence Service -CSIS)は、中国政府の支援のもと、サイバー空間でスパイ活動を行っている可能性が高いと繰り返し警告してきた。

 中国政府が2017年に施行した国家情報法は、同国の企業に国家の情報活動を支援し協力、参加することを義務付けている。こうした中国政府の(軍事のハードパワーに対して)ソフトパワーによる進出を、CSISは10年ほど前から監視しており、2016年にはその報告書の中でファーウェイの危険性を名指しで警告するまでになっていた。

 また昨年12月には、同局のデビッド・ビグノー長官がカナダ経済クラブの会合の席上「今後カナダが経済発展のために力を入れていく知識ベース経済の分野ー人工知能、クオンタム技術、5Gネットワーク、バイオ医薬品、クリーンテクノロジーなどーに対し、ある国家の支援を受けた企業によるスバイ活動が行われている」と注意を喚起している。

 こうした警告にもかかわらず、UBCのほか同州のサイモンフレーザー大学、オンタリオ州のトロント大学などいくつのカナダの大学は、同社から多額の寄付を受け取ったり何百万ドルの契約を結んだりしている。たとえばUBCは2017年10月に、ファーウェイから300万ドルを研究開発および通信研究費として受け取ったほか、それ以前には科学および技術学科向けのコンピューター業務の無償提供も受けていた。

 同大学によると、ファーウェイは2017年だけで1千万ドル以上を研究費としてカナダの大学に寄付しているという。

 

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