2019年2月28日 第9号

 オンタリオ州トロントでレクリエーション・ホッケーの審判を務めるスティーブ・マクニールさんは、2012年からアルツハイマー病についての啓蒙と寄付集めのために、『1926スケート』キャンペーンを続けている。1926は、彼の母親が生まれた年。彼女は人生の最後20年ほどをアルツハイマー病と闘いながら過ごし、2012年に他界した。

 キャンペーンの内容は、マクニールさんがカナダ国内に7つあるNHLチームの本拠地の各都市で、19時間26分のマラソンスケートをして、一口19・26ドルの寄付を募るというもの。

 そんなマクニールさんはまた、ロックグループのAC/DCの大ファン。きっかけは1978年に同グループの演奏を偶然観たことだったが、特にメンバーの一人のマルコム・ヤングがアルツハイマー病と診断されてからは、彼らの音楽のためにもスケートを続けている。マルコム・ヤングはAC/DCのリードギタリストでバンド結成メンバーの1人、アンガス・ヤングの兄にあたる。

 そんなマクニールさんが先日、アルバータ州カルガリーでスケートをしていたところ、1人の男性が彼にアプローチしてきた。今までにもキャンペーンのことを知った人が、自分たちの体験談を語るためなどに彼に声をかけることはよくあったので、彼は特別なこととは思わなかった。この男性はマクニールさんに、キャンペーンのことを昨夜のテレビニュースで知り、父親にこのことを知らせるつもりだと語った。父親がアルツハイマー病と闘っているのかというマクニールさんの問いに対し、この男性はそうではなく、父親はAC/DCのドラマー、クリス・スレードだと答えた。

 そして米ラスベガスにいたクリス・スレードとオンラインビデオで会話を楽しんだマクニールさん。翌々日にはバンドのマネジャーから連絡があり、アンガス・ヤングが、このキャンペーンに19260ドルの寄付をする意向だと伝えてきた。この奇跡的な出来事に驚きを隠せないマクニールさんだが、最もうれしかったのは寄付金ではなく、アルツハイマー病に対する認識が今回の件で飛躍的に高まることだと、取材に答えている。

 

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