2018年12月6日 第49号
ジャスティン・トルドー首相は11月30日、アルゼンチンのブエノスアイレスでアメリカのドナルド・トランプ大統領、メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領と北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新貿易協定「アメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に署名した。
同地で開催されている20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)期間中という異例の署名式となった。
3首脳共同記者会見でトルドー首相はトランプ大統領に向け、「数日前にトランプ大統領と議論した通り、今回のゼネラル・モーターズが発表した工場閉鎖計画は、多くのカナダ、アメリカ国民に影響を与える」と述べ、カナダ政府としてはカナダの家族やコミュニティを守るために尽力することは言うまでもないと語った。そして「ドナルド、これこそが(アメリカ・カナダの)2カ国間にある鉄鋼・アルミニウム関税の撤廃に向け努力する必要がある理由だ」とトランプ大統領に直訴した。
一部報道では、トルドー首相はアメリカから鉄鋼・アルミニウム関税撤廃の約束を取り付けられなければ新協定には署名しない可能性があるとの関係筋の話を伝えていた。
カナダ国内ではアメリカに譲歩した印象が強いUSMCAへの合意に反発する声も上がっている。特に酪農産業では、アメリカ側の強い「カナダの供給管理制度の廃止要求」に譲歩する形でアメリカからの酪農製品の輸入拡大で合意。国内の輸入シェアを3・5パーセントとしている。酪農産業からは今回の新協定に署名しないよう要求が出されていた。
トランプ大統領が就任後、NAFTAの撤廃も視野に入れた新協定の交渉が3カ国で続けられていた。今夏にはカナダ・アメリカ間での交渉が難航し、アメリカ・メキシコ間で話し合いが進むなど、カナダにとって厳しい状況が続いていた。
条約は3カ国の国会で批准される必要がある。しかし今年11月に実施されたアメリカの中間選挙で、民主党が下院の過半数を獲得、上院は共和党が過半数とねじれ現象が起こり、アメリカで批准されるかにも注目が集まっている。