2018年10月25日 第43号
ブリティシュ・コロンビア州で20日に実施された地方選挙で注目のバンクーバー市長には、無所属ケネディ・ステュワート氏が当選した。
当選後のあいさつでステュワート氏は、市議会とコミュニケーションを取りながら、住宅問題の解決などに取り組みたいと抱負を語った。
次点はNPA(Non-Partisan Association)ケン・シム氏。NPAからは市議に5人が当選した。
市長選は史上初めてというほどの接戦となった。ステュワート氏が49812票、シム氏は48828票と、984票差で1000票を切る僅差。そのためシム氏は開票直後には「完全に公式に票が決定するまで敗北宣言はしない」と語り、支援してくれた人々のためにも最後まで戦うと語っていたが、22日にようやく敗北宣言した。
ステュワート氏は連邦議会バーナビー・サウス選挙区の元新民主党(NDP)議員で、市長選に立候補するため9月に議員を辞職、無所属で出馬した。無所属候補がバンクーバー市長に当選するのは1980年のマイク・ハーコート元市長以来38年ぶり。ステュワート氏は公約した住宅問題を最優先に市政に取り組むと約束した。
しかし市議10人のうち5人がNPA。3人がグリーン党で、コープ党1人、ワンシティ1人。グレゴール・ロバートソン前市長率いるビジョン・バンクーバーが今回は惨敗し、1人も当選しなかった。ビジョンに比較的政策が近いといわれているステュワート氏。今後市議会とどう折り合っていくかが焦点となる。
今回の選挙はメトロバンクーバーで現職が次々と引退を表明し、少なくとも13人の新市長が誕生することが分かっていた。ふたを開けてみるとベテラン市長も新人に敗れる大波乱で16人の新市長が誕生した。
最も驚きを持って受けとめられたのがバーナビー市デレク・コリガン前市長の落選。立候補した現職市長の中でも5期連続当選を果たしていただけに、新人候補の元消防士マイク・ハーリー氏に6000票という大差で敗れたのは衝撃だった。しかしバーナビー市議はコリガン前市長が率いていたバーナビー・シチズンズ・アソシエーションが8人中7人当選。残りの1議席はグリーン党で、ハーリー氏がどのように市議会をまとめるのかがカギとなりそうだ。
ポートムーディ、ピットメドウズでも現職市長が新人に敗れる波乱があった。
サレー市では同市元市長ダグ・マッカラム氏が市長に返り咲いた。これまで13年間サレー市議会を圧倒していたサレー・ファーストから擁立された元市議トム・ギル氏が次点で敗れた。
マッカラム氏はセーフ・サレー・コアリションから出馬。サレー市に建設される予定の公共交通機関サレーLRTの代わりにスカイトレインの延長と、現在サレー市の治安を担当している連邦警察に代わりにサレー市独自の市警設立を2大公約に掲げて選挙戦を繰り広げ約17000票差をつけて圧勝した。
市議会もセーフ・サレー・コアリションが8議席数中7議席を獲得。サレー・ファーストは辛うじて1議席を確保するにとどまった。
ギル氏の敗因はサレー・ファーストの票が3位だったブルース・ヘイン氏との間で割れたためではないかと分析されている。
マッカラム氏は73歳。1996年から2005年までサレー市長を務め、2005年の選挙でサレー・ファーストのダイアン・ワッツ元市長に敗れた。
また州都ビクトリア市では、リサ・ヘルプス市長が再選を果たした。ヘルプス市長といえば、今年8月にビクトリア市役所前のカナダ初代首相ジョン・マクドナルド氏の銅像を撤去して物議を醸した。
他に現職ではリッチモンド市のマルコム・ブロディ氏が2位のロイ・サカタ氏以下を抑えて圧勝、コキットラム市でもリチャード・ステュワート氏が大勝した。
新しい献金制度が導入されて立候補者が多く、バンクーバー市では市長選には21人、市議には71人、公園庁委員、教育委員会委員も含めると158人が立候補。選挙会場では長い候補者リストに戸惑う有権者も少なくなかったとメディアが伝えている。