2018年9月6日 第36号

 居住地域はもとより、言語や文化なども含めた、カナダ全土に住む先住民を紹介する地図帳『カナダ先住民地図帳』が完成、オンタリオ州トロントで8月29日、公開された。

 連邦政府の予算によって、先住民のワークグループが2年の歳月を費やし、カナダ王立地理学会の協力も得ながら完成した地図帳は、全4刊。その他にも、オンライン版インタラクティブ地図帳なども、同時に完成した。こうした先住民への敬意が込められ、その生の声が反映された有意義な地図帳は、先住民の子供たちだけではなく、それ以外の子供たちにとっても良い教材となるだろうと語るのは、このプロジェクトの教育アドバイザーを担当したシャーリーン・ベアヘッドさん。

 地図帳作成には、先住民やメティス、イヌイットなどの各グループが、どのような内容を自分たちのセクションに載せるかを決めた。失踪および殺害された先住民女性の国家調査プロジェクトの教育コーディネーターも務めるベアヘッドさんは、こうした作成過程が重要だと語っている。

 また、カナダ王立地理学会の最高執行責任者(COO)のジルズ・ガグニエさんも、優れた教育書として、この地図帳は先住民との融和へ向けた確固たるステップになると指摘。この地図帳から学ぶことが、カナダ全土はもとより、全世界に散らばる先住民たちの声に耳を傾け、理解することの一助になると語っている。

 この地図帳にはそのほか、寄宿学校や植民地化、人種差別、また文化盗用といったトピックにも言及している。この地図帳の共同編集者で、ブリティッシュ・コロンビア州カニム湖先住民居住区メンバーのジュリアン・ブレーブ・ノイズキャットさんは、この地図帳に込められた先住民たちの声が多くの人に届き、行動を起こすきっかけになることを期待している。

 この地図帳は間もなく、カナダ全土の学校に配布されるほか、教師にはこの地図帳の有効利用を手助けするガイドも送られる。「私たちは今、かつて誰かの土地だったところに居座っているが、その彼らについて学ぼうとしなかった。しかしこの地図帳がある限り、もう言い訳は許されない」と、ベアヘッドさん。この地図帳が学校内にとどまらず、ひろく一般家庭にまで広まり、先住民に関する教育の糸口となることを期待している。

 

 

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