2018年9月6日 第36号
連邦上告裁判所は8月30日、カナダ連邦政府のトランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画承認を無効化する判決を下した。判事3人による全会一致だった。
裁判所は連邦政府承認無効化の理由を、連邦政府がパイプライン建設に関係する先住民族との対話に欠け、先住民族の人々の懸念を払しょくする取り組みを怠ったこと、カナダエネルギー委員会(NEB)がパイプライン建設を承認するに当たり、環境への影響を考慮することを「法的に義務付けられている」にもかかわらず、今プロジェクトに関係するタンカー航行増加の考慮を不当に外した欠陥があり、これを基に承認されたプロジェクトは認められないと、説明した。
これによってプロジェクトは一時中断することになる。
連邦政府は裁判所の判決を受け、判決内容を精査し今後の対応を検討すると同日に発表。ビル・モルノー財相は、「パイプライン完成に向けて努力する」と語った。
翌日になってジャスティン・トルドー首相が判決について言及。厳しい環境対策と先住民との和解は、自由党政権が掲げる重要な2大政策であり、連邦政府がこれら2つの対策に今後も尽力していくことに変わりはない、判決が出たことでこれからさらに努力していく方向性が見えたと語った。
9月4日にはブリティッシュ・コロンビア州サレー市を訪問していたトルドー首相は、この日の記者会見でも記者にパイプライン建設承認の無効化について改めて質問されると、「一国に頼っているオイルの輸出先を多様化するためにもパイプライン建設は必要」と、これまでと同じ回答を繰り返した。
隣にいたBC州ジョン・ホーガン州首相は、「この件については連邦政府と意見が違う部分があるが、BC州にとって最善の方法を模索していく」と笑顔を見せた。トランスマウンテン・パイプライン拡張工事についてBC州新民主党(NDP)政権は反対の立場をとっている。
ホーガン州首相は8月30日に判決が出た直後の記者会見でも勝利宣言はせず、BC州先住民族やバンクーバー市、バーナビー市の訴えが裁判所に認められたことを喜ぶコメントに抑えた。
8月30日には訴えを起こしたスコーミッシュなどの先住民族たちが同州バンクーバー市で記者会見を開き、自分たちの訴えが裁判所に認められたと喜びを爆発させた。ツレイル・ワウトゥス族チーフ、モリーン・トーマス氏は、この判決をカナダと先住民族が真の意味で和解する新しい機会にすることが最も望ましいと語った。
パイプラインのターミナルがある同州バーナビー市デレク・コリガン市長は、これまで建設に反対してきたが今回の判決は初めて妥当なものとなったと語った。同様に反対してきたバンクーバー市グレゴール・ロバートソン市長は、今回の決定は先住民族の人々の権利と、建設に反対してきた我々にとって大きな意味を持つ勝利となったと声明を発表した。