2018年6月28日 第26号

 2017年3月、カリブ海のリゾート空港に着陸寸前のウェストジェット機が、悪天候による視界不良から高度を誤り、滑走路手前の海面に接触する寸前に上昇を開始したインシデントで、カナダ交通省はパイロットの高度確認が不適切だったとする報告書を4日、発表した。

 2017年3月7日、カリブ海に浮かぶリゾート、セント・マーチン島西部のプリンセス・ジュリアナ空港に向けて最終着陸態勢に入っていたウェストジェット2652便は、突然の豪雨に見舞われ、パイロットは滑走路を明瞭に視認できなくなった。この時点でパイロットは、よりはっきり見えていた滑走路の左側に隣接するホテルを滑走路と勘違いして、機首をこのホテルに向けて着陸を続行していた。

 通常の着陸では、飛行機を操縦するパイロットが航法計器、または滑走路を目視して機体をコントロールし、その間もう一人のパイロットは計器類をモニター、高度や経路、その他に異常がないことを確認する役割分担が徹底されている。

 しかし今回の場合、視界不良のため二人が滑走路目視に集中した結果、高度のモニターがおろそかになり、滑走路への進入が異常に低い高度になっていることに気が付かなかった。

 幸い飛行機は滑走路の1・6キロメートルほど手前(着陸まで約20秒)で豪雨から抜け出し、パイロットらは滑走路を視認。自分たちがホテルに向かっていることに気が付き滑走路へアプローチを修正できたものの、眼下に広がる青一色の単調な海面からは、自分たちが異常な低高度にいることを即座に察知することができなかった。

 最終的に、地表面が真下に迫っていることを自動的に感知するシステムが作動、コックピット内に合成音声の警報が鳴り響いた。それでもこの緊急事態をパイロットが飲み込み、上昇操作を開始するまで数秒の遅れがあったと報告書は指摘している。この時の海面からの高度は約57メートル、およそ15階建てビルの高さだった。

 その後ウェストジェット機は上空で天候回復を待ち、45分後に無事同空港に着陸した。

 プリンセス・ジュリアナ空港は、滑走路の端がすぐリゾートビーチになっており、着陸寸前の飛行機が間近で見られることから、飛行機マニアの間でも人気スポットになっている。今回の着陸インシデントも、あるマニアが動画で撮影しており、インターネット上に公開している。この人物は45分後の正常なアプローチも撮影しており、両者を並べて表示している。これを見ると、いかに1回目のアプローチが低かったかが一目瞭然だ。

 ウェストジェットは当初、この件はインシデントにも当てはまらない軽微なものだと、あわや大惨事といったニュアンスの報道を繰り広げたメディアを非難していたが、一方で、この空港への着陸に関する社内の運航規程を修正、パイロットに視界不良時の注意事項と、隣接ホテルと滑走路の誤認の可能性を警戒するよう喚起していた。

 

 

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