2018年6月21日 第25号
ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアに住む天文学者が、発見した小惑星に先住民族の名前を与えた。
この天文学者デーブ・バラムさんは、これまでにも50個近い天体を発見し命名してきた。そんな彼が今回発見した、直径約2キロメートルの小惑星「402920」につけた名前は、同州バンクーバー島の先住民族の名前ツァウート(Tsawout)。その理由を彼は、「何百年の間、干ばつや洪水、飢饉など、様々な試練がふりかかっても、自分たちの文化伝統を守り抜いてきた」ことに対する敬意を表するためだと、取材に語っている。
またバラムさんは、同族の言い伝えには人は死んだあと、天に昇り星となるというのがあることを紹介、今回の命名により、天から彼らを見守る目が一つ増えたと話している。
バラムさんは先月、ビクトリアで開催された国際天文学連合(International Astronomical Union, IAU)の第49回年次総会にツァウート族の首長ハービー・アンダーウッドさんを招待し、「402920」がツァウートと命名されたことを記念する盾を贈呈した。アンダーウッドさんは何百人もの天文学者や科学者が見守る中、バラムさんが2007年に、この小惑星の存在を捉えて以来、その公式確認のために必要なデータ収集に費やした努力を称えた。
新たに発見された天体への命名は、一般に思われているほど簡単ではない。よく星の命名権を購入して、自分の好きな名前をつけるといった話がニュースで取り上げられたりするが、これは天文学者や、天体への公式な命名登録を行っているAIUなどの公式機関とは関係しない、いわば非公式なもので、公式な記録としてはどこにも残らない。
新しい天体に対する命名提案権は発見者に与えられ、売買も禁止がうたわれるなど、厳しいルールがある。また発見後小惑星の動きを追い続け、その軌道計算を精密に行い報告することも義務付けられている。50年後の小惑星の位置であっても、正確に計算できるだけの精密さが求められる。この軌道計算がIAUに認められて初めて、発見者からの命名提案が同連合に受理される。そのため、新天体の発見から命名までは5年から20年ほどかかるのが一般的だ。