2018年6月7日 第23号

 カナダ政府が5月29日に買収を発表したキンダーモーガン社のトランスマウンテン・パイプラインについて、同社のトップ2人が各150万ドルをボーナスとして受け取ることが4日分かった。

 ボーナスを受け取るのは、キンダーモーガン社カナダ社長イアン・アンダーソン氏と、同社トランスマウンテン・パイプライン拡張工事副社長デイビッド・サファリ氏。今回の報酬について同社は、理事会で了承されたとし、業界では一般的な対応と説明した。

 トランスマウンテン・パイプラインについては、拡張工事計画が2016年秋に連邦自由党政権によって承認されて以降、それまで以上に強い反対活動が先住民族や環境活動家によって続いていた。

 そして今年に入り、ブリティッシュ・コロンビア州新民主党(NDP)政権が、BC州内を通るビチュメン(オイルサンド)に対して、より厳しい環境基準を設ける計画を発表。パイプライン建設推進派の連邦政府・アルバータ州政府と、反対派のBC州政府の対立が、国を二分する議論にまで発展していた。

 こうした動きに対して、キンダーモーガン社は工事が予定通り進まないとして、連邦政府に今年5月31日までに打開策を出すように要求。その答えとして、カナダ政府が45億ドルで現存のパイプラインと工事計画を買収すると発表した。政府はこの買収計画を5月28日に発表、同社トップへの報酬も同日付の公式文書に記載されている。

 これに対して4日、国会では野党が政府を追及。新民主党(NDP)議員ネイサン・カレン氏は連邦政府による買収を「キンダーモーガン救済措置」と呼び、2人のトップに合わせて300万ドルのボーナス支給は、政府救済策という損害にさらに侮辱を加えるようなものだと批判した。保守党議員シャノン・スタブス氏も、国民の税金で買収した中に各150万ドルのボーナスが含まれているとはトップ二人にとってはいいニュースだが、エネルギー産業労働者にとっては悪いニュースだと語った。

 連邦政府は、引き続きキンダーモーガン社の主要な人材がプロジェクト完成のために必要と説明した。

 パイプライン問題については、ジャスティン・トルドー首相は5日にBC州を訪問し、関係する先住民族との話し合いを持った。事業が民間企業から政府に変わったことによる影響を説明し、反対派を説得したとみられている。

 

 

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