2018年5月3日 第18号
ブリティッシュ・コロンビア州内陸部の先住民族、内陸部サリッシュ族のディオン・カスザスさんは、先住民族の伝統的なタトゥーの技術の普及に尽力しているアーティストのひとりだ。しかし先住民デザインのタトゥーが一般人の間に広まるにつれ、今度はこれが非先住民による文化の盗用になるという論議が起きている。
例えばジャスティン・トルドー首相は左肩に、地球を抱く先住民デザインのワタリガラス(レイブン)のタトゥーを入れている。このワタリガラスは、同州ハイダグワイの著名な先住民アーティスト、ロバート・デビッドソンさんの作品を基にしている。
このタトゥーについてデビッドソンさんは、自分には何の相談もなかったと指摘、際限なく繰り返される無断盗用に、失望する感情も麻痺してしまったようだと嘆いている。こうした先住民アートは高度に洗練されながらも沈黙に追い込まれた自分たちの祖先や文化を反映しており、先住民の間では畏敬の念すらもって扱われているとデビッドさんは説明、「首相は私たち先住民を、感情を持った人間だとは思っていない」と、取材に語っている。
この件についてトルドー首相の公報担当はコメントを控えているが、代わりに首相が2012年にツイッターに「地球のタトゥーは25歳の時に、そして40歳の誕生日にロバート・デビッドソンのワタリガラスを追加した」と書き込んでいることに触れている。
しかしカスザスさんも、非先住民による先住民デザインのタトゥーへの盗用は他人のアイデンティティを勝手に自分の体の一部にする行為で、先住民に対する虐殺に等しいと非難する。
デビッドソンさんは、トルドー首相が選出された時にハイダ族の間では、新しい政権が先住民の生活向上と彼らの聖地を保護する政策を取るのではという期待が高まっていたと語っている。しかし今では、まるで使い古された雑巾のような気持ちだと、ため息をついていた。