2018年4月19日 第16号

 第二次世界大戦でイギリス空軍の主力爆撃機だったアブロ・ランカスター。戦中戦後を通じカナダでも製造され、カナダ空軍も1963年まで運用してきた。そのうちの一機が1964年、トロント市に寄贈され、中心部海岸沿いのコロネーション公園に野外展示されていた。

 しかし風雨にさらされたことから機体の腐食や傷みが進み、また雨水・下水処理の一環となる沈殿トンネル(ウェスタン・ビーチ・ストレージ・トンネル)建設のため、1999年には当時ダウンズビュー公園に新設されたトロント航空博物館に移管され、復元作業が始まった。

 しかしその後の作業は順調とは言えなかった。同航空博物館は資金繰りの問題から2012年、アブロ・ランカスターをはじめとするコレクションを収蔵していたハンガーを明け渡さなければならなくなる。この事態を受けトロント市は再び同機の所有者となり、その復元作業を続けてきた。

 現在、多くのボランティアによって作業が行われているのは、トロント市から北に100キロメートルほどにある町、ステイナー。しかし作業は遅々として進まず、ついにはこの機体をブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア空港内にある、BC州航空博物館に譲渡する計画が進められてきた。

 これに対し、これまで復元に関わってきた空軍の元パイロットや整備士、また歴史家らが「このアブロ・ランカスターはトロント市の歴史と文化遺産であり、金銭で語られるような問題ではない」と、トロント市に機体を手放さないよう求める陳情を行ってきた。そして同市経済開発委員会は13日、復元を担当する部署に対し、復元費用捻出方法の調査と、少なくとも次の委員会で論議される7月までの間、譲渡計画を保留する動議を可決した。

 一方、同委員会に出席していたBC州航空博物館のジョン・ルイス館長は、同館はアブロ・ランカスターをステイナーからビクトリアまで搬送する費用も賄えると発言。さらに同機復元に必要な技術も有しているが、復元を専門に行う企業ビクトリア・エア・メンテナンス社と共同で作業を行い、飛行可能な状態に仕上げる自信があると語っていた。

 

 

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