2018年3月15日 第11号

 アルバータ州政府レイチェル・ノッテリー州首相は8日、州議会の開会の式辞でブリティッシュ・コロンビア(BC)州への石油供給を停止する可能性があるとことを示唆した。

 アルバータ州とBC州は、トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画を巡って抗争が続いている。工事を進めたいアルバータ州と工事中止を狙うBC州のせめぎ合いは、先月アルバータ州政府がBC州ワインの販売停止を実行し、ついに無関係の一般市民にまで影響を及ぼした。

 その後、BC州が抗争を裁判に持ち込むとしたことで、ワイン販売停止を取り下げたアルバータ州政府だが、今度は石油の供給停止を示唆した。

 背景には、アルバータ州内での野党連合保守党(UCP)との争いがある。石油停止もUCPジェイソン・ケニー党首のアイデア。同党首は先月バンクーバーを訪問し、記者会見を開いてパイプラインの重要性を訴えた。その時に、石油停止の選択肢も語っている。

 アルバータ州は2019年に選挙を控えている。2015年の選挙で思わぬ大勝をした新民主党(NDP)だが、元連邦保守党政権閣僚のケニー氏が野党党首に就任したことで、NDP政権は大きなプレッシャーに直面している。天然資源産業はアルバータ州の主要産業で、石油関連票獲得のための州内抗争がBC州攻撃に繋がっている。

 しかしBC州への石油供給停止については、必ずしもアルバータ州で全面的に支持されているわけではない。石油会社の中には、停止されれば直接利益に影響が出るとして賛成しないとの声も上がっている。

 ノッテリー州首相の意図は他にも連邦政府を動かすことにあるが、ジャスティン・トルドー首相は、パイプラインは国の決定事項であり州政府が停止することはできない「パイプラインは必ず建設する」と語っているが、アルバータ州とBC州の抗争に直接介入はしていない。水面下で両政府と話し合いを行っているという。

 パイプライン拡張工事を巡る両州の抗争の発端は、BC州政府が2月にビチュメンの輸送について環境問題を理由に制限することを検討すると発表した時から始まった。

 工事については2016年11月に連邦自由党政権が建設の承認を発表している。しかし、BC州では反対が根強く、工事計画が発表された時から続いている。10日には大きな反対デモも実施された。

 両州の抗争は今後もしばらく続くとみられている。

 

 

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