2017年12月14日 第50号
ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで4日夜、同市とリッチモンドを結ぶカナダライン車内で、17歳の女性が見知らぬ男から暴言・暴力を受けた。この女性は、自分がイスラム教であることから暴力を受けたと、オンライン上のSNSで訴えている。
事件が起きたのは、同日午後10時少し前。この女性はリッチモンドに住むノール・ファーデルさんで、仕事からの帰りカナダライン始発駅のウォーターフロント駅で電車に乗り込んだ。席についた彼女に見知らぬ男が近づき、彼女やすべてのイスラム教徒を殺してやるなどの暴言を吐き始めた。
さらにこの男は彼女がかぶっていたヒジャブを掴み、彼女の顔を彼のまたに押し付けようとしたあと、彼女の顔を殴った。彼女によると、乗り合わせた乗客はこの状況をただ見ているだけで、何かを言うことすらしなかったという。そんな中、乗客の一人ジェーク・テーラーさんが二人の間にはいり、暴漢がバンクーバー・シティ・センター駅で降りるまで、彼女に近づけさせなかった。
テーラーさんとともに次の駅で降りたファーデルさんは、ここで警察と救急隊員の到着を待った。彼女を迎えに来た兄によると、ファーデルさんは体の震えが止められない状況だったという。今後彼女が公共の場に出ることを極端に恐れるようになるのではと心配していた。
彼女は見ず知らずの男から、ただヒジャブをかぶっていたことだけで暴力を受けたことを悲嘆するとともに、まわりのほとんどの人がそれを止めようとしなかったことにも心を痛めている。また彼女の兄も、多くの乗客がいながらも、たった一人しか助けに入らなかったことに落胆しながらも、彼の阻止が入らなければ、妹は暴漢の写真を撮るチャンスはなかっただろうと語り、妹の置かれた状況を変えた重要な人物だったと感謝している。
撮られた写真をもとに事件を捜査していたメトロバンクーバー交通警察は6日、バンクーバー国際空港で46歳の住所不定の男性ピエール・ベルゼン容疑者を逮捕した。同容疑者に前科はないものの、警察に知られた存在だった。また精神的な問題を抱えた人物だと、警察では説明している。
そのため、今後の審理は一般犯罪とは違う形で行われる可能性があるものの、女性に対する重大な犯罪には変わりなく、厳密に法に基づいた裁きを求めると、警察はコメントを発表している。また暴漢とファーデルさんの間に一人で立ちふさがったテーラーさんに対して、危険をおかしても最悪の状況を未然に防いだ勇気ある行動だと称賛し、感謝の意を述べていた。