2017年11月9日 第45号

 アメリカ・ワシントン州の人口2万人弱の町、ポートエンジェルスを旅行していたカナダ人青年(16歳)が、強盗被害にあったのは10月6日のことだった。ホテルに帰る途中の青年に自転車に乗った男が接近、クマよけ用スプレーをふりかざして青年が履いていた靴ーナイキの限定モデル、エアージョーダンーを奪っていった。

 この事件を知った地元教会メンデッドの牧師ジョー・デスカーラさんは、この町でこんなことが起こったことにショックを受けたが、この青年に靴を返そうとまわりの人に協力を求めていった。盗まれたのと同様の靴の価格は約200アメリカドルだったが、教会では購入資金が集まる前に靴を買うことにした。最初は地元でこの靴を探したのだが、限定モデルのため地方の小売店はほとんど入荷できず、オンラインで購入するしかないことがわかったからだ。

 注文した靴は10月下旬に到着、デスカーラさんはポートエンジェルス警察署にこれを持ち込み、青年のカナダの住所に確実に送るよう依頼した。彼とともに購入資金集めに奔走したライラ・アダムスさんは、募金のための銀行口座を開いたり、ペイントした小石を街角に置いて多くの町民と、この件のことをシェアできるようにしたりした。

 カナダの青年の母親と電話で話した警察署長ブライアン・スミスさんによると、母親は町民の思いやりに感謝しているとのこと。またこうした町民の思いやりを目の当たりにして、この町の一員であることを誇りに思うと取材に語っていた。

 デスカーラさんは、靴を奪った男を非難する言葉を至る所で耳にするが、もっとポジティブなことに目を向けてほしいと願っている。「この町ではいいことがあちこちで起こっている。今回の件では、たとえ悪いことが起こっても、まわりの人はいいことを起こせるんだということを示せたのだから」とデスカーラさんは語っていた。

 

 

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