2017年11月9日 第45号
オフショア金融に関する大量の記録内容が5日、明らかになった。「パラダイス文書」と名付けられたタックスヘイブン(租税回避地)に関わる1340万件の記録には世界中の政治家、著名人、有名企業の名前が記載されていた。
今回流出された記録文書を南ドイツ新聞が入手、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)と参加する世界67カ国、約100報道機関、ジャーナリスト約380人と共有し、今回の発表となった。カナダでは、CBC/ラジオ・カナダとトロントスター紙が参加している。
CBCはこの日、内容を大々的に報道。カナダが関わっていた企業、信託、基金、個人などは合わせて約3300件と公表し、中には有名企業、元首相、政府関係者が含まれ、衝撃が走った。
企業では、ナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)モントリオール・カナディアンズ、大手スーパーマーケットのロブロウや、個人ではブライアン・マルルーニ、ポール・マーティン、ジャン・クレティエンの元3首相の名前もあったとしている。
基本的にはオフショア対策は違法ではないという。そのため、今回の件について各企業や個人は「合法に適切に処理している」と説明している。
今回の文書で最も注目を集めているのはスティーブン・ブロンフマン氏。2015年総選挙でジャスティン・トルドー自由党の献金対策・収支監督を担当した。またトルドー家とも家族ぐるみの付き合いがあることでも知られている。CBCによれば、ブロンフマン氏と彼の投資会社クラリッジは、ケイマンアイランドにあるオフショアトラストの600万米ドルに関連してカギを握っているとされている。それはカナダが何百万ドルにのぼる税収を失っている可能性につながるとしている。
これについて6日からの国会では、野党からトルドー首相への批判が相次いだ。今夏、税制改革を打ち出し中小企業を対象とした「抜け道」の是正を訴えた自由党が、富裕層、しかもトルドー首相の友人が納税回避の可能性があることに批判が集中している。自由党は2015年総選挙で中間層への支援と富裕層への増税、租税回避の追及を訴えていた。トルドー首相は今回の批判に対し、自由党政権は租税回避については多くの予算を付けて対策を講じていると反論した。租税回避への抜け道を塞ぐ方法については、自由党はこれまでのところ対策を発表していない。新民主党(NDP)がこれについては法案を提出した。
今回の大量文書の大半が、バミューダ諸島に拠点を置くオフショア投資の顧客を多く持つ法律事務所「アップルビー」から流出した。同法律事務所が抱える顧客のトップはアメリカで、次いでイギリス、中国、カナダとなっている。