2017年7月20日 第29号

 携帯電話のアプリを利用して車の乗り合いを可能にする、アメリカで始まった配車サービス、ユーバー。その業務形態が既存のタクシー業界を脅かすだけではなく、自治体によっては違法操業になるのではないかなど様々な指摘がなされているが、そんな論議を横目に勝手に事業をスタートした業者がある。

 それは、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市で3月に営業を始めた「U滴快車(Udi Kuaiche)」。ちなみに、中国語のみのサービスだ。同社のウェブサイトには、その企業目的が「中国人コミュニティのすべての人にライドシェアサービスを提供し、この業界の次のリーダーを目指す」ことだと表明している。

 しかしライドシェアはBC州では違法行為とみなされている。業界最大手のユーバーは2012年に一時期営業を行ったことがあるが、すぐに州の旅客運送委員会から営業停止を命じられている。

 これに対しU滴快車は、BC州には同社の営業を取り締まる法律は存在しなく、したがって法に抵触しているとは思わないと、メディアに公言している。そのうえで、もし当局がしかるべき条例を整備したならば、それには従うとしている。

 これに対しリッチモンド市は、同社がBC州政府の許可のみならず、市の事業許可証も取得しないまま営業を開始したことを指摘、法が整備されていないことが即営業許可に結び付くわけではないと反論している。

 メディア関係者が匿名で、中国語メッセージアプリ微信(WeChat)からこのサービスを利用してみたところ、10分以内に付近にいたドライバーが到着したという。サービスの利用に際し、ユーザー登録は必要ない。料金は一般のタクシーなら16ドルほどかかる距離が、9ドルで済んだ。支払いは現金、クレジットカード、または前出の中国語アプリから人民元での支払いもできる。

 BC州タクシー協会は、当局の監督を受け車もドライバーも基準を満たしているタクシーに対し、低価格の乗り合いには危険が付きまとうと警告している。もし事故などに遭っても、タクシー乗車時のような補償が得られない危険性を指摘している。

 この批判に対しU滴快車は、ドライバーの採用は厳格に行っており、彼らに対する訓練もなされていると反論。しかしメディアが匿名で利用したドライバーは、知人の紹介があれば簡単にドライバー登録でき、トレーニングを受けたことはないと話している。これに対し同社は、インタビューを行えばその人物の運転傾向やスキル、地元の道路事情の精通具合は判断できるし、ドライバー登録に当たり犯罪履歴のチェックは必須としていないとしている。

 この件に関しBC州交通局は、この件を承知しており現在調査中であると、メディアに文書で回答している。

 

 

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