2017年1月26日 第4号

 マニトバ州ウィニペグのレストランで14日夜、ウェイトレスが思いがけず1000ドルのチップを手にした。

 この女性は、同市に住むジェニファー・パイチェさん。彼女は生活のために2つの仕事を掛け持ちしている。日中はウィニペグの北30キロメートルほどの小さな町ストーンウォールの食料品店に勤め、そのあと一週間のうちほとんどの夜は、ウィニペグ市内のレストラン、モンゴーズグリルでウェイトレスとして働いている。その場合、彼女は1時間の車での移動を含め、朝7時から午後10時半まで働きづめとなる。

 この日は本来彼女の出勤日ではなかったが、パイチェさんは同僚の代わりにレストランへ向かった。週末で混み合うレストラン、パイチェさんは仕事量が自分の手に負えるレベルを越えてきたのを感じながらも、必死にお客を待たせないよう店内を駆け巡っていた。

 パイチェさんが担当するテーブルに、ひとりの女性が3人のティーンエージャーとともに座った。同僚の誰かに手伝いを頼むべきだったと後から思うほど忙しかった彼女は、それでもできるだけ迅速に注文を取り、食事を運ぶようにした。彼女がその時覚えていたのは、彼らは決してパイチェさんに苦情を言ったりせず、辛抱強く食事を待っていたことだった。

 そのテーブルの食事が終わり、会計の段になって彼女が驚いたのは、ワイヤレスのカード支払機から出てきたレシートには「チップ1000ドル」と印字されていたこと。ちなみに、食事代金は87ドル15セントだった。

 何の疑いもなく、テーブルの女性客に間違いを指摘したパイチェさんに、この女性はこの金額で合っていると伝えた。思わず涙があふれ出たパイチェさん、感謝のハグをしたものの、あまりの感動にこの女性の名前を尋ねるのを忘れてしまった。

 2年前に高校を卒業し、進学のためにお金をためようとしていたパイチェさんはしかし、まずクレジットカードの残高を返済しなければならなかった。この日思いがけず手にした1000ドルで、この残高を完済することができた。

 このことを女性客に知らせたかったパイチェさんは、自身のフェイスブックに事情をアップした。そして18日、この女性客リサ・ホルゲートさんが、この件についてメディアの取材に応じた。

 かつては自分もモンゴーズグリルのウェイトレスだったというホルゲートさん。あの晩のパイチェさんが、どれだけストレスにさらされていたかはよくわかると、取材に答えていた。そんな彼女に100ドルのチップを払おうと思っていたというホルゲートさん。いざカード支払機に金額を入力する段になって、もう一桁多くしようと、ふと思ったという。

 自分のしたことが誰かのためにとても役に立っていることがわかり、今はとてもいい気分だと、彼女は取材に答えていた。

 

 

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