2017年1月1日 第1号

 ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア郊外の人口約1万8千人の町オークベイは、野生の鹿の被害に悩まされている。

 オークベイは海岸に面した高級住宅街で、庭など美しい街並みで有名だが、最近ミュールジカ(black-tailed deer)が民家の敷地内まで侵入するようになり、庭の花などにも被害が出るようになってきた。その被害対策として2015年には、11頭の鹿が間引き目的で殺されている。また車と衝突したり、フェンスなどに挟まり身動きが取れなくなったりして死亡する鹿の数も増えている。

 最近ではジョギング中の女性の前に鹿が飛び出し、一緒にいた犬はひづめで蹴られ、本人も転んだ際に足に軽いけがを負ったという。繁殖期のオス鹿は攻撃的になることも知られている。

 状況を改善するには鹿の頭数を減らすしかないが、町では鹿を殺してそれを実現するという、間引き猟に対して動物愛護の観点から賛否両論が巻き起こっている。

 そんな中、鹿の命を奪わずにこの問題を解決しようと生物学者や識者などから成る民間組織、アーバン・ワイルドライフ・スチュワードシップ協会が作られ、アメリカから入手した注射式避妊薬で鹿の出産数を抑えようという試みが始まる。

 あまり人を恐れない鹿は、最近では3〜4メートルまで近づくことができるので、至近距離から避妊薬を仕込んだ注射針を、空気銃で打ち込もうという計画だ。市では2万ドルの予算を組み、州政府にも同額の支援を要請しているが、政府側は避妊薬の安全性と頭数制限にどれほどの効果があるかを具体的に示すよう求めている。

 

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