2016年12月1日 第49号

 ジャスティン・トルドー首相は11月29日、注目のトランスマウンテン・パイプライン拡張計画について承認すると発表した。今年12月19日を期限としていた同拡張計画の発表だったが、他の2計画と共にこの日に発表された。

 トランスマウンテン・パイプライン拡張計画はキンダーモーガン社が手掛けるアルバータ州からブリティッシュ・コロンビア州バーナビーまでの現存するパイプラインに沿って拡張する事業費68億ドルをかけた計画。完成すれば、これまでの3倍の一日89万バレルのオイルサンドを輸送することになる。

 トルドー首相は、この日の記者会見で「カナダの天然資源がより環境に配慮した方法で海外市場に輸出可能とするのは、カナダ政府の義務だと思っている。これにより雇用を促進し、経済も発展する」と語った。

 ただ157項目の条件付きとなっている。「BC州沿岸に安全性が保障されなければ、自分が反対していた」と首相は語った。

 これに対し、BC州では「裏切られた」の声があがった。この事業は計画当初から反対が根強い。パイプライン沿いの先住民族をはじめ、環境保護活動家、メトロバンクーバーの関係住民、バーナビー市デレク・コリガン市長、バンクーバー市グレゴール・ロバートソン市長も強く反対している。

 この日、バンクーバー市内ではさっそく反対のデモ行進が行われた。反対派は政府のこの承認の判断について徹底的に戦う構えを見せている。

 この日にはその他、エンブリッジ社による2つのパイプライン建設計画についても発表された。一つはアルバータ州からBC州北西部沿岸までのノーザン・ゲートウェイ・パイプライン建設計画で、これは選挙前の公約通り承認しないと発表した。保守党前政権時代には承認に向けて着実に段階を踏んでいた、この大型パイプライン建設計画だったが、パイプラインがBC州の貴重な生態系が残る地域を通ることもあり、先住民族や環境活動家の反対が強く、トルドー首相自身も前からこのパイプライン建設計画には反対の意向を示していた。

 もう一つはアルバータ州からアメリカのウィスコンシン州までのライン3計画で、古くなった既存のパイプラインを取り換える計画。特に大きな議論となっていなかったこのパイプラインについては承認された。

 今回のオタワでの発表にはアルバータ州レイチェル・ノトリー州首相も駆けつけた。トルドー首相とツーショット写真の機会を作るなど全面協力の姿勢を示した。トルドー首相も記者会見の中で「ノトリー州首相のリーダーシップとアルバータ州の気候変動対策プランがなければ今回の(トランスマウンテン)プロジェクトの承認はできなかった」と称賛した。ノトリー州首相は長く暗いトンネルをようやく抜け光が差し始めたと会見で述べ、「これでようやく中国や他の市場にいい価格で(オイルを)輸出する機会が得られる」と、自由党政権の発表を歓迎した。

 一方でBC州クリスティ・クラーク州首相は記者会見すら開かなった。12月19日の期限より前倒しで発表され、意表を突かれた形となった。またBC州野党新民主党(NDP)ジョン・ホーガン党首も記者会見は予定されていなかった。

 

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