2016年9月8日 第37号

 保守党の党首選に立候補しているケリー・リーチ議員が9月1日、党内に向け党員の関心事を調査する質問書で、移民問題についてカナダへの移民希望者に「反カナダ人価値観」を査定する必要があると思うかとの問いがあったことが分かり、物議を醸している。

 報道によると、他の項目では法人税削減、マリファナの合法化、選挙改革など一般的な質問も多かった中で、移民に関するこの項目だけが際立っていたという。

 これについて党内では賛否両論というよりは反対派の方が多いとも伝えている。しかし、リーチ議員の意図はこうした移民問題がどれだけ党内での賛同を得られるかを計り、党首選に持ち込みたいとしているのではとみている。

 リーチ議員は5日にも自身の「反カナダ人価値観」査定の提案を、議論する価値のある重要な提案だと主張する声明を発表。改めてこの件を強調した。

 しかし、他の候補者からは反対の声が上がっている。マキシム・ベニエ議員は6日、法の公平性、男女公平、寛容と自由といったカナダ的価値観を守っていくということは大事としながらも、「反カナダ人価値観」を計るとして移民希望者を査定することは意味がないと語った。さらに、こうした査定によってイスラム国支持者のようなテロリストをカナダから排除することはできない、テロリストは移民者だけではなくカナダ生まれのカナダ人にも存在するとして、国内で起きたカナダ人によるテロ行為を指して反論した。マイケル・チョン議員も「最悪の政治的駆け引き」として、この提案を一蹴している。

 また、保守党ローナ・アンブローズ暫定党首も5日、テレビインタビューでリーチ議員の提案は支持できないと語った。さらに個人的にはと前置きしたうえで、「反カナダ人価値観」をどのように査定するのか分からないとし、党の考えとしては、「カナダにとって移民は非常に重要」との認識を示した。

 ある専門家は、アメリカの大統領選で共和党立候補者として注目を集めているドナルド・トランプ氏が国民の安全を理由に移民に対して強硬な姿勢を示して、ある一定の支持者から支持を得ているが、そうした方法がカナダでどれほど通用するのか疑問だとしている。

 党を二分するだけとの批判も党内にはあり、2019年の総選挙で打倒自由党として一丸となって臨む必要があるだけに、リーチ議員には立候補を降りてもらいたいとの声も上がっている。

 

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