2016年8月18日 第34号

 アルバータ州エドモントンに住むムーアさんの長女イブリンちゃんは7月、1歳の誕生日を迎えた。他の同年代の幼児と同じように活発なイブリンちゃん。彼女が他の幼児と唯一違っているところは、車いすの生活を送っていることだ。

 4カ月検診の時、看護婦がイブリンちゃんの股関節の異常に気がついたのに続き、医師は彼女の脊椎から腫瘍が突出しているのを発見した。診断は、ステージ4の神経芽細胞種。腫瘍を切除することは不可能なため、イブリンちゃんには化学療法が施されており、現在は8回目の投薬が行われている。

 がん自体は縮小傾向にあるが、イブリンちゃんは生涯下半身不随だと、医師から告げられた。

 それを聞いた時は、本当に心が張り裂けそうだったとイブリンちゃんの母親キム・ムーアさんは取材に語っている。しかし夫婦で一晩泣き明かした後、二人は世界で最も強い母親と父親になると決めた。

 イブリンちゃんは他の乳幼児と同じように手を使ってハイハイを始めるだろうから、2歳ごろまではそうやって動き回らせ、その後に車いすに移行させるよう、担当医はムーアさんたちに説明したが、他の子供たちと同じような自由を、少しでも早くイブリンちゃんに与えたいと思ったキムさんは、インターネット上にアイデアを求めた。そして、乳幼児用車いすを自作した人がいることを見つけ、夫のブラッドさんに同じような物が作れないか、相談した。

 ブラッドさんが一晩ガレージで奮闘した結果、キャスターと子供用自転車の車輪を装着したまな板の上に、ベビーチェアの定番バンボ・ベビー・ソファを接着した、イブリンちゃん専用車いすが完成した。

 最初はどうしたらいいのか戸惑っていたイブリンちゃんだったが、やがて前進、後進や曲がる技術を習得していき、興奮している時には体を前後にゆすって前輪のキャスターを鳴らすことまでできるようになった。今ではリビングの真ん中にかまぼこ上の突起を設け、イブリンちゃんがスピードを出し過ぎないようにしなければならないほどだという。

 また小児がんの専門医ベブ・ウィルソンさんは、イブリンちゃんが車いすを自在に操りながら彼女のオフィスを初めて訪れたときの様子に感銘を受け、こうした乳幼児を持つ他の親にも紹介したいと語っていた。

 この車いすの製作にかかった費用は約100ドル。イブリンちゃんが成長し、一般の車いすを用意しなければならなくなった時には、何千ドルの出費を覚悟しなければならない。夫婦はその準備は始めていると、取材に話している。

 

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