2016年7月28日 第31号

 性的少数者や様々な人種、いろいろな主義主張を掲げる活動家。彼らを分け隔てなく受け入れてきたブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーのカフェが、もうすぐ閉店する。

 2013年に開店したハートウッド・コミュニティカフェは、その前身であるリゾームカフェの経営姿勢を受け継ぎ、そうした人々に居心地のよい空間を提供し続けてきた。個性の強い人など、どんな人でもここを我が家のように利用してきたと語るのは、同店を経営するハートウッド・コミュニティ・デペロップメントのマネジャー、メラニー・マティニングさん。

 もともとリゾームカフェが閉店に追い込まれたのは、店の賃貸料の値上がりによる資金難だった。この時はトリニティユナイテッド教会が資金提供を申し出て、現在のハートウッド・コミュニティカフェとして再出発することができた。同教会のライアン・ウォーカー牧師は、こうした活動への援助こそ、教会への募金が使われるべき道だということで、とりあえずやれるところまでやってみようと始まったと、開店当時のいきさつを語ってくれた。

 しかし、とどまるところを知らない賃貸料の上昇と収入の減少のため、同教会は援助も限界と判断、その停止を決定した。皮肉なことに、カフェの役割自身は順調だったとマティニングさん。詩の朗読会や音楽生演奏、活動家への寄付集めイベントなどで常に地元の人々の注目を集めてきた。

 そして何よりも、手頃な価格で健康的な食事ができる場所を提供、特に価格設定を「払えるだけでOK」とした「みんなのためのスープ」は、この店の自慢だったとマティニングさん。

 閉店に追い込まれたことを悲しむ彼女だが、また街のどこかでこうした店をオープンできることを願っていると取材に語っていた。

 先週は有色人種のコメディアンによるコメディナイトを開催した同カフェ。そのような企画を実行できる場所は、バンクーバーの中でも滅多にないと指摘し、ビジネスの目的を利益ではなく、コミュニティの発展や差別のないオープンな姿勢に集中したとしても、こうやって多くの人から支持されてきたことを本当に誇りに思っていると、マティニングさんは付け加えていた。

 ハートウッド・コミュニティカフェは8月15日に閉店となるが、それまでは通常どおりの営業と、数々のイベントを開催する。また8月12日には、「ベスト・オブ・ハートウッド」と題して、最後のイベントを行う予定。

 

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