水中ソナーを備えた水中グライダーで、クジラの行動を把握するとともに、大型船舶との衝突による事故死を防ぐ実験が、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島沖で行われている。

 この水中グライダーは、長さ約2メートルの魚雷に似た胴体にジェット機のような羽を備え、遠隔操作で自由に航行できる。

 この研究は、同州ビクトリアのビクトリア大学のほか、ノバスコシア州ハリファックスのダルハウジー大学や国内の研究機関が共同で行っている、クジラ調査のプロジェクトの一環として行われている。

 水中グライダーは23日、バンクーバー島西岸の町トフィーノの北の沖合にあるフローレス島から発進、西海岸北部の主要航路ーアメリカ・アラスカ州からプリンス・ルパート、バンクーバーを経てアメリカ・ワシントン州までーに沿った海域でのクジラの探索を行う。

 水中グライダーは搭載したバッテリーで約3週間行動でき、その間水中ソナーでクジラの位置情報などのデータを記録する。そして定期的に浮上し人工衛星にそのデータを送信、この情報を受信した船舶は、航路上のクジラをいち早く把握して衝突を避けることができる仕組みだ。

 またこのソナーは、クジラの発する音からその種類を特定する機能も持つ。ビクトリア大学クジラ研究所所長のデイビッド・ダッフスさんによると、今回の調査海域はコククジラやザトウクジラの生息域とみられているほか、絶滅危惧種のシロナガスクジラやナガスクジラ、イワシクジラが確認されるチャンスもあるという。  実際、絶滅危惧種のなかでも危険度が高い太平洋セミクジラが2013年に、カナダの領海内では実に62年ぶりにこの海域で確認されている。

 このような水中グライダーを用いた調査は、ダルハウジー大学が大西洋セミクジラの生態調査のため2年ほど前から行っている。また大西洋側では、船舶との衝突が絶滅危惧種クジラの死亡のメジャーな原因のひとつになっているという。

 一方、太平洋側ではデータが不十分なため、衝突がどれほどクジラの脅威になっているかは解明されていない、しかし、その危険性は大型クジラにはつきものであるとダッフスさん。クジラ生態学者として、今回の実験から得られる発見には関係者全員が胸躍らせていると取材に答えていた。

 

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