ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンドの、日系移民の長い歴史を持つ漁港スティーブストンで、その歴史小話を携帯端末などに表示させるサービスが開始された。

 紹介されるのは、最近『日系ストーリー』として公開された3分の短篇ドキュメンタリー10本。

 このドキュメンタリーは、BC州バンクーバーの映画やマルチメディアの製作を行うオービット・フィルム社が2年の歳月をかけて完成させたもの。

 これらのドキュメンタリーは、その歴史が実際に起こったスティーブストンで、携帯電話などの端末を使用して見ることができる。リッチモンド市のアプリ『RichmondBC』をインストールするか、道路わきに立てられた赤と黒の『日系ストーリー』の表示板に印刷されているQRコードをスキャンすることで、映像が視聴できる。

 ドキュメンタリーは、100年以上前に始まったスティーブストンの日系人移民の歴史の黎明期から、戦中、戦後までの主だった人物、出来事を題材としている。

 マクレナンさんはさらに、これらのサイトを巡るガイドマップも作成、誰でも好きな時に日系人の歴史探訪ツアーができるように便宜を図っている。またそのためにも、自分のモバイル端末の現在位置機能をオンにしておくとともに、『日系ストーリー』に近づいたときに端末が確実に反応するよう、アプリ(アップルのiTunes link、アンドロイドのPlay Link)をインストールしておくよう、アドバイスしている。

 ツアーはモンクトン通りを基点に、スティーブストンの中心部を巡ってブリタニア造船所跡へと向かっている。主な見どころには、ガルフ・オブ・ジョージア缶詰工場、独特の木造建築が美しいスティーブストン仏教会、またスティーブストン・マーシャル・アート・センターなどが含まれている。

 ドキュメンタリーは全部で30分の上映時間となるため、それらを途中で見ながらのツアーは普通に歩くスピードで約2時間かかる。

 マクレナンさんによれば、スティーブストンの歴史の中で日系人の活躍は欠かすことのできないものだったことが、これらのドキュメンタリーを見ることでわかると話している。例えば1920年代、この漁港で商業用漁業のライセンスを所有していた2/3の漁師が、日系人だった。その一方で、差別的待遇を改善するため、本間留吉や林林太郎らが幾度となく法廷で戦ってきたこと、また初の日系カナダ人教師となり、日系人児童が公立小学校に通えるように尽力した清水兵藤ヒデも紹介している。

 ドキュメンタリーではそのほか、最初は労働力として扱われなかった日系人女性が、缶詰工場や洗濯、イチゴ農場での仕事をいかに獲得するよう努力したかにもスポットライトをあてている。

 また日本軍の真珠湾攻撃に端を発した、戦中・戦後の日系人強制収容の歴史にも触れている。スティーブストンの歴史遺産として保存されている市電は、この時約2200人の日系人を一時収容先のPNEに輸送するために使用されていたことも、ドキュメンタリーは伝えている。

 この『日系ストーリー』が最初に一般公開されたのは、スティーブストン仏教会で2月16日のことだった。在バンクーバー総領事館総領事岡田誠司氏夫妻をはじめ、リッチモンド市市長マルコム・ブローディ氏など、当地における日系人の歴史を重要視している多くの来賓のみならず、会場となった仏教会本堂を埋め尽くした地元の観客が、その関心の高さを示していた。

 なお、この『日系ストーリー』はスティーブストン博物館のほか、専用ウェブサイトでも見ることができる(『Nikkei』『Stories』で検索)。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。