連邦政府は1月27日、暫定的ながらパイプライン建設に関する新環境基準を導入すると発表した。

 ジェームズ・カー天然資源産業相とキャサリン・マッケナ環境・気候変動相が記者会見し、現在建設計画が進んでいるキンダーモーガン社のトランス・マウンテン計画とトランスカナダ社のエナジー・イースト計画もその影響を受けることになると明らかにした。

 マッケナ環境相は、「連邦政府の環境調査過程が国民に信用されることが重要」と述べ、「国民の懸念、先住民族の権利、天然資源産業への支援を考慮しなければならない」と語った。国民への説明や先住民族との話し合いなど、これらに配慮した新基準が導入されることになる。

 環境調査の中には、温室効果ガス排出量も含まれる。調査対象はパイプラインだけではなく液化天然ガス(LNG)のターミナルも含まれる。

 すでに計画が進んでいるパイプライン建設について、全く一から対象となることはないが、トランス・マウンテンも、エネジー・イーストも、現在の計画よりも遅れる可能性はある。

 今回発表された新基準は、現在のカナダエネルギー委員会(NEB)とは切り離して行われる。NEBはパイプライン建設のプロジェクトについて条件を満たしているかなどの調査を行い承認する役割を担っている。

 しかし、前保守党政権時代には、環境に対する調査がほとんどおこなわれていなかったとの批判もあり、自由党は選挙期間中にNEBの改善を約束していた。マッケナ環境相は、NEBの機能を完全に見直すには数年の時間がかかると語った。

 今回の自由党政権の発表に、環境活動家などは一定の評価をしているが、野党保守党や天然資源産業、天然資源産業を主要産業とする州政府からは不満の声があがっている。原油価格が急落し、苦しい経済状況に直面している現状で、パイプライン建設の遅れは州経済や雇用に直結すると訴える。さらに、パイプラインが最も安全で確実に天然資源を運ぶ手段であることも強調している。

 カナダでは3件の巨大パイプライン建設計画があるが、そのうちの一つエンブリッジ社のノーザン・ゲートウェイ・パイプライン計画については、自由党政権は認可しない意向をすでに発表している。昨年はアメリカのバラク・オバマ大統領によってキーストーンXLパイプライン建設計画も中断を余儀なくされ、カナダの石油産業に大きな影響が出ている。

 天然資源産業がカナダ経済を支える主要産業の一つであることは間違いなく、環境問題とどのようにバランスを取っていくのか。自由党政権にとって難しい舵取りが迫られる。

 

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