ブリティッシュ・コロンビア州政府は11日、キンダーモーガン社に対して同社が計画しているトランスマウンテンパイプライン拡張計画は州政府の条件を満たしていないとして、現時点では承認できないとカナダエネルギー委員会(NEB)に伝えていたことが分かった。
BC州政府マリー・ポラック環境相は電話会見で、同社計画書はBC州政府が要求している5条件を十分に満たしていないと理由を語り、「ただこれが完全に計画を止めるものではない」とし、今後条件を満たすような改善がされれば承認もあり得ることを示唆した。
州政府があげたのは、原油漏れ防止策と事故緊急対策が陸海両方で不十分ということ。さらに、先住民族との関係やBC州への利益配分なども満足できるものではないとした。
トランスマウンテンパイプラインは、アルバータ州エドモントン近くで採掘されたオイルサンドを、BC州メトロバンクーバーまで運ぶ既存パイプラインを拡張する68億ドルの巨大プロジェクト。完成すれば現在の約3倍、一日当たり89万バレルの原油を運ぶことになる。運ばれた原油はバラードインレットを通りタンカーで海外へと輸出される。
キンダーモーガン社は今回のBC州の発表に、今後も条件を満たすよう努力し、必ず完成させると自信をのぞかせた。そのためにはBC州政府、連邦政府との協力が不可欠との見解を示した。
パイプラインが完成すれば、バンクーバーの中心にあるバラードインレットを航行するタンカーの量は約7倍になるとBC州政府は試算している。そのため、環境活動団体だけではなく周辺都市でも反対が多い。バンクーバー市グレゴール・ロバートソン市長は、単純計算しただけでも7倍になるタンカー数が町の真ん中を航行することは原油漏れ事故が起こった場合、経済的利益だけでは補えないリスクがあるとの声明を発表した。バーナビー市デレク・コリガン市長は、早急に計画を停止するよう連邦政府に書簡を送ったと語った。
保守党前政権時代は推進されていたパイプライン建設計画だが、昨年10月の総選挙で自由党政権が誕生し、環境対策基準などを見直すのではないかとみられている。ジャスティン・トルドー首相は、アルバータ州からBC州北西部キティマットまでのノーザンゲートウェイ・パイプライン建設計画には反対すると選挙公約に掲げていたが、トランスマウンテン計画には反対はしていない。しかし、環境問題に力を入れると公表している自由党政権が、環境対策で何からの変更をする可能性はあるとみられている。