ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市の住人が、中国語を話せないために管理組合会議から締め出されたのは人権侵害だと訴えている。 BC州人権裁判所に訴えを起こしたのは、同市中心部のガーデンシティ公園近くにある54世帯が入居しているタウンハウス、ウェリントン・コートに住むアンドレアス・カーグートさんほか数名。
カーグートさんによると、問題の発端は2014年に管理組合理事会が大幅改編されたことだという。この時、管理組合理事会メンバーの1人の中国人が大量の委任状を取り付け、中国語を話せないメンバーを理事会から締め出す決議を一方的に通してしまった。
以来、理事会は全て中国語だけで行われているという。
カーグートさんが最近、理事長のエド・マオさんから受け取った電子メールには、次回開催される管理会議では英語を一切使用しない、それが管理組合運営の最も効率的な方法であると記されていた。
メディアの取材依頼に対し、マオさんは回答していない。
タウンハウスでは最近、腐り始めた梁の修繕に関する塗装工事が行われたが、その費用が予算オーバーするなど不明な点があると、住人の中から指摘があったという。それに対し理事は、中国語を話さない住人たちが管理費を着服しているといううわさを流し始めたという。
さらに理事会は昨年夏、再び37票もの委任状をかき集め、長年にわたってタウンハウスの管理を行ってきた管理会社との契約を打ち切った。
カーグートさんは理事会は安く請け負う管理会社に切り替えるつもりだろうと思い、今回の管理会議に出席するつもりだったが「中国語だけの会合で、どうやって内容を理解して質問しろというのだ」と憤る。
ちなみに理事会が中国系に乗っ取られる以前は、会議には中国語の公認通訳が用意されていた。現在の理事会はしかし、公認通訳を雇うつもりはないとしている。カーグートさんは、その費用を払いたくないのだろうとみている。
コンドミニアム・ホームオーナーズ協会はメディアの取材に対し、このようなケースは聞いたことがないと話している。確かに中国移民の多いリッチモンド市では、過去5年の間に3〜4件ほどの言語に関する苦情が上がったが、いずれも英語を中国語に翻訳するサービスを導入することで速やかに解決されたと言い、今回のようにその逆のパターンは前代未聞だとしている。
BC州の法律上では住民会議で使用される言語についても通訳の必要性についても規定されてはいない。しかし、前述のホームオーナーズ協会のエグゼクティブ・ディレクターは自らの経験として、パンジャーブ語が母国語のコミュニティでは、1人でもパンジャーブ語が話せない者がいれば、当人のために全てを英語に切り替えているという。それでも翻訳上のミスから法律問題に発展することも多く、公認通訳は必須だとしている。
タウンハウスの管理費は現在200ドル足らずになったが、カーグートさんらは、これでは建物を維持していけないのではと危惧している。最近、タウンハウス内の歩道の舗装がせり上がり、誰かがつまずく危険性が出てきたが、共有部分ということもあり全く放置されたままだという。「以前だったらすぐに直されたものなのに……」と、カーグートさんはタウンハウスの行く末を案じている。