2018年8月23日 第34号

隣組の制作による出版物第2弾が今年7月に出版された。タイトルは、“OUR EDIBLE ROOTS” The Japanese Canadian Kitchen Garden。

一見すると和食のレシピが集められたクッキングブックのようだが、実はレシピ付きガーデニングブック。 日系コミュニティのルーツを野菜作りから食を通して紹介する「カナダ日系の食文化」が学べる本となっている。 今回はこの出版を記念して制作に関わった人々をねぎらう完成記念会がバンクーバー市の隣組で行われた。 本はすでに購入可能だが、一般への出版本完成披露会は、今秋10月20日に予定されている。

 

 

この日集まった本の制作関係者とボランティアのみなさん。隣組で

 

きっかけは隣組で提供するランチのための野菜作り

 本を制作するきっかけは、隣組ガーデンクラブによる野菜作りだった。隣組がシニアのために提供している、週2回の和食を中心したランチのための野菜作りを3年くらい前から始めたことがきっかけとなった。

 その中心にいたのが橋本あつみさん。「最初は、小さな畑で、ここのキッチンで使う有機栽培したホームメイドの野菜をランチプログラムで使いましょうということだったんですけど」と振り返る。

 しかしやってみると意外と難しい。まずカナダで和食に合う野菜を栽培することが大変だと分かった。そこで知恵を借りたのが、この地に移民して野菜作りを手掛けてきた日系農家の人たち。

 話を聞いてみると、一世、二世の農家は後継者が少ないまま高齢化が進み、その知識と知恵を生かせる場が非常に少ないことが分かった。

 そこでどうにかして、この地で日本の野菜を育ててきた農家の人たちの経験と知識をまとめながら役立てる方法はないかと思いついたのが本の制作だった。

 「最初はカレンダーかなにか小さなパンフレットみたいなのを作るつもりだったんです」と橋本さん。しかし、ガーデンクラブでパートナーとして一緒に活動しているマキコ・スズキさんが連邦政府へ助成金の申請を提案、隣組でも了承され、助成金を得ることができた。

 橋本さんは日本食料理店が多いバンクーバーでの和食人気を見て、「これだけ日本食が食べられているなら、その中に何パーセントかのガーデナーがいるし、何パーセントかのお料理をしたい人がいるし。そういう人たちに、日本の野菜の育て方、日本の野菜をどういうふうに使うかっていうことを書いた、そういうふうな本を出したらいいんじゃないかっていうのが出発点でした」と言う。

 そして2017年には「ニュー・ホライズン・フォ・シニアプロジェクト」として本格的な制作が始まった。

 

ガーデニング本としての人気を期待

 このプログラムは「シニアのための、シニアが若い人たちに教える、伝える、ということがフォーカスになっています」と橋本さん。だからシニアと若者との交流も一つの大きな目的だった。

 スズキさんも、高齢になった農家の人たちが、これまで誰にも伝えることができなかった自分たちのカナダでの日本野菜を作ってきた経験を生かせることができてうれしい、という声を聞いて、「自分たちが学ばせてもらう機会があって感謝している」と語った。

 この日の制作完成記念会の場には、そうした本作りに貢献したシニア農家の人々も招待された。

 スズキさんによると、2017年に隣組が管理している2つのガーデンで収穫した野菜は42キログラムにもなる大成功だったという。

 橋本さんはこの本を手に取って、「どうやって育てるか(を見て)、実際に育ててほしい」と言う。「誰も今のところは、ガーデニングブックとしてあまり本気に扱っていないですけど」と笑ったが、「実際には一番人気があるところで、たぶん一番簡単にこの本を使い始められる部分ではないでしょうか」とガーデニング本としての人気を期待していた。

 

隣組ガーデンクラブの努力と日系農家の知識の結晶
日本野菜の栽培方法が凝縮の一冊

 ガーデニング本としての人気を期待するというのも納得の内容が、この本には詰まっている。

 季節ごとにバンクーバーで栽培・収穫できる野菜の育て方を丁寧に解説。茄子やキュウリといったおなじみの野菜から、和食には欠かせないシソや三つ葉、大根、バンクーバーではあまり見かけないカブなど、約20種類の野菜の栽培方法やそのルーツを説明し、種や苗が購入できる販売店も合わせて紹介している。

 後半は、その野菜を使ったレシピ約40点を掲載。最後に本の制作に協力した日系農家の人々を紹介するコーナーも設けている。

 橋本さんは、ガーデニングを客観的に見て戦前の移民者の時代から現在まで野菜作りも変わってきていると感じている。これからは、日本人、日系人だけではなく、カナダの人々にも日本の野菜を栽培する楽しさを味わってほしい、そのためにこの本は「いいきかっけになるんじゃないかなって思います」と語った。

 

隣組について

 1974年に組織された日系一世を支援するためのボランティア団体。1976年4月にバンクーバー市イーストヘイスティングスに事務所を開設。以降、日系コミュニティの中心的存在として活動し、現在に至っている。

 これまでの主な活動には、日系人移民100年祭、パウエル・ストリート・フェスティバル創設、日系カナダ人リドレス運動など、日系の歴史の大きな変革行事の中心としての役割を果たすとともに、バンクーバーで生活する日系人、主にシニアの生活向上を目指したプログラムを行っている。

 シニアが中心となっている隣組ガーデンクラブは2016年初めから本格的に始まった。

 現在は新事務所(42 West 8th Ave., Vancouver)で引き続き活動している。

 

“OUR EDIBLE ROOTS” The Japanese Canadian Kitchen Garden購入先

 本はすでに販売されている。7月29日、ブリティッシュ・コロンビア州グリーンウッドで行われた日系収容75周年記念表示板除幕式でのレセプションで販売した時には完売した。8月4日、5日のパウエル祭でも販売され、上々の売れ行きだったという。

 今回出版された本は、隣組が制作した本では2冊目。1冊目は2007年出版の “Home Away from Home: the Vancouver Tonari Gumi Cookbook”。こちらは日本料理のレシピ集で、すでに4000部以上を販売。第4版となっている。今回はそれ以上の売り上げを期待している。どちらも英語版のみ。

 購入先は、隣組事務所ほか、バーナビー市の日系文化センター・博物館、リッチモンド市スティーブストンのガルフ・オブ・ジョージア・カナリー内(12138 Fourth Avenue, Richmond)、種苗会社ウエスト・コースト・シーズ(https://www.westcoastseeds.com/)。

 詳しくは隣組まで。電話:604-687-2172、HP:http://jp.tonarigumi.ca/

(取材 三島直美)

 

 

今回の出版プロジェクトで中心となった橋本さん。関係者全員の努力と協力に感謝した

 

隣組の近くにあるガーデン。きれいに咲いた花を摘み取るスズキさん

 

7月に出版された "Our Edible Roots" The Japanese Canadian Kitchen Garden

 

本の制作に協力した農家の人たち

 

この日、参加者全員に振る舞われたお弁当。作り方は本で紹介されている

 

 

 

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