2018年3月8日 第10号

2月22日、バンクーバー市の隣組で日加ヘルスケア協会の座談会が開かれた。今回は中医学の中元優子医師が免疫力を高める方法や風邪予防と対策などを紹介した。リンパの流れを良くするためのツボ押しやマッサージなど、すぐに役立つ情報も満載で、約20人の参加者はメモを取りながら熱心に聞き入っていた。ここで、その概要を紹介する。

 

有用な情報が満載の座談会

 

瞑想で心おだやかに

 座談会はまずマインドフルネスで始まる。日加ヘルスケア協会の理事でもあるアンダーソン佐久間雅子さんの指導のもと、ボディースキャンという瞑想をする。暗くした部屋でアンダーソンさんがリードする声に合わせて、体のすみずみまで意識を向けて感覚を感じ取る。ボディースキャンは自分の体と対話し体と心のつながりを回復して、精神の平安が得られるといった効果があるといわれる。

 

風邪と花粉症の違い

 風邪と花粉症の症状はよく似ており、意外と見分けが難しい。風邪の場合、最初は透明な水のような鼻水が出て、そのうちねっとりしたり、色も黄色っぽくなったりする。花粉症の場合、色の変化はほとんどなく、透明や白っぽい水のような鼻水が出る。どちらの場合も喉の痛みはあるようだが、花粉症だと喉がイガイガすると感じることが多いようだ。また、目がかゆくなったり、充血しているといった場合は花粉症の可能性が高い。目がかゆいとこすりたくなるが、それによって花粉がついて眼球を傷つけることもあるかもしれないので、こすらずに洗った方が良い。 

 

免疫力を高めるには

 免疫力とは、ウイルス、細菌、異物などが体に入ってきたときに対する抵抗力だ。免疫細胞には白血球、リンパ球などがある。また、口、耳、気管などにある粘膜は、ウイルスなどの侵入を防ぐ。粘膜が乾燥すると風邪を引きやすくなるので、日頃から水分補給は大切だ。

 心臓から出る動脈には酸素がたくさん含まれており、その酸素を体のあちこちに運んでいる。動脈が枝分かれして毛細血管となり細胞に染みわたる。それから血液は静脈によって心臓に戻っていく。リンパは血管のように体中に張り巡らされており、体内の老廃物や余分な水分を吸収する。血液が心臓から出て戻ってくる所要時間は1分以内に対し、リンパは12時間超と非常にゆっくりしている。リンパの流れが悪くなると老廃物が蓄積し、主にむくみといった症状が現れる。そのような場合、リンパマッサージをして流れを促進し、余分な水を取り除くようにする。リンパが集まっているところは脇の下、そけい部、膝の裏などだ。また、リンパは筋肉の動きによって流れるので、筋肉量が少ない女性の方が一般にむくみやすいとされている。運動不足もリンパの流れを悪くする一因となる。リンパにあるリンパ球は体内に入って来た異物を退治するという大切な細胞なので、リンパの流れをよくすることは免疫力を高めることにつながる。

 

風邪予防と対策

 免疫力を高め風邪を予防するには、良い生活習慣を保つことが大切だ。

― 食事…自分の体に合う食べ物をバランスよく摂る。いろいろな色の食物を摂る。辛味(生姜、ねぎなど)、甘味、酸味、塩味、苦味(瓜系の野菜など)といったさまざまな味のものを摂る。

― 睡眠…中医学理論に基づくと、午後11時から午前1時または学説により3時まで熟睡していると肝臓や胆嚢が休まり身体が回復するので、この時間帯に夢も見ずに熟睡することが理想的。寝ている間にトイレに行くために起きる場合は、日中の生活改善が必要である。

― 運動…無理なく頑張りすぎないで楽しく続けることが大切。歩くだけでも良い運動になる。

 お勧めしたいのは温熱療法だ。体の冷えがいろいろな病気につながるので、体を外からも中からも温めたい。中から温めるには飲み物や食べ物で工夫する(例―生姜やねぎなど体を温める食物を積極的に摂る)。外から温めるためには、即席カイロを貼るというのも良い。首の後ろにある大きな骨の下あたりを温めるのが効果的だ。ヘアドライヤーで温風を首の後ろや腹部、膝などに当てるのも良い。また、お灸も効果がある。最近のお灸は棒状で体に直接つけないタイプのものもあるので手軽にできる。そして、とてもお勧めなのは足湯。これは冷えだけでなく、むくみ対策にも効果的だ。桶のようなものにお風呂くらいの温度のお湯を入れ、内くるぶしから指4本分くらい上までを浸す。熱いお湯を横に用意しておいて冷えてきたら足すといいだろう。30分浸かったら、足を拭き、乾いたバスタオルで足をしっかり包む。足を少し上げた状態で10〜15分ほど置くと、体から汗が出てくるくらい温かくなってくる。お湯に酢を入れたり、好みのエッセンシャルオイルをたらしても良い。

 また、手洗いとうがいは風邪予防対策として大切だ。鼻うがいも効果的。2パーセント濃度の塩水(ぬるま湯を使うこと)を使い、両鼻から吸って口から出す。難しければ片方ずつやってもいい。これは花粉症予防としても効果があるし、目が疲れているとか頭が重いという人にも試してもらいたい。

 風邪は引き始めに治すことが肝心なので、風邪気味かなと思ったときは、休息をとることが大事だ。粘膜を乾燥させないために水分補給も大切。体を温めるという意味でも白湯を日頃から飲むようにしたい。風邪の引き始めにお勧めと紹介したのが温かいコーラ。コーラ(ダイエットとかゼロではなくオリジナルを)1缶と、スライスした生姜を5〜6枚くらい鍋に入れて沸騰させる。そこにレモン半個分を絞り入れる。コーラというより中国のお茶のような感じになるという。温かいうちに飲んで体を温め、早く床に就いてゆっくり休もう。

 

ツボ押しで免疫力アップ!

 最後に、顔のリンパを刺激して風邪や花粉症対策、さらに美顔にも効果的というツボ押しを実演つきで紹介した。リンパが集まっている耳の前と後ろを、指の関節を使って押し、それから鎖骨までツボ押ししていく。その後、腕をストレッチして、脇の下や裏側を伸ばす。これでリンパの流れを良くする。参加者も実際にツボ押しとストレッチをやってみた。その他にも、ひざの裏を伸ばす足のストレッチなども行い、実用的な情報がたくさんだった。

 

中元優子氏 プロフィール
大阪府出身。1991年にカナダに移住。カナダ、台湾で中医学を学び、BC州中医師免許を取得。リッチモンド市で中医学クリニックSea Island Wellness Clinicを開院。鍼治療、漢方薬処方、食事・運動指導をしている。日系団体、日本語学校、SFUアジア学部の学生を対象にした健康講座を行っている。

(取材 大島多紀子)

 

 

楽しく分かりやすい説明で参加者の興味をひきつけた中元優子医師

 

マインドフルネスの指導をするアンダーソン佐久間雅子さん

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。