ウエストバンクーバー動物病院

獣医師DVM水野昌子さん

 

Dr. Masako、そう名前で呼ばれることを好むという優しい動物のお医者さんというイメージがピッタリの獣医師水野昌子さん。ウエストバンクーバーのパーク・ロイヤルにあるウエストバンクーバー動物病院(West Vancouver Veterinary Hospital)で、獣医師として動物たちをケアしながら、共同オーナー兼経営者として、将来には「動物の総合ケア」を担える施設を目指している。開業して約3年。これまでの経緯やペットオーナー必見の健康法などペットのケアについて話を聞いた。

 

 

動物のことを話す時、優しい表情で語る水野さん。「ワンちゃん、猫ちゃん」と呼ぶのが印象的。 自身も猫を飼っている。「とってもかわいい」と表情が緩んだ。 動物病院の事務所にて

  

カナダで獣医師として

 水野さんはDVM『Doctor of Veterinary Medicine』の称号を持つ。カナダでは、国家試験に合格して初めて獣医師として治療をすることができる。日本での資格は適用されない。言葉の壁など、乗り越える壁がいくつもあったという。

 獣医を目指したのは、子供の頃から動物が好きだったから。ペットを飼い始めて動物病院に行き、獣医という仕事を知った。その時「動物のお医者さんになりたいな」と思ったという。

 日本では獣医学の大学を卒業後、獣医として働いた。しかし、毎日診察や治療をしているうちに、「もっともっと勉強しないと治せない病気がいっぱいある」という思いが強くなり、「思い切って海外に出てみようという感じ」で決心した。

 そのためには、まずは英語の勉強。「(カナダに)来る前に3、4カ月は必死に、家庭教師を付けたりして自己勉強しました。それでも英語の壁は非常に厚くて」と笑う。2001年に来加し、英語の勉強をし、TOEFLを受験。オンタリオ州グエルフ大学のGraduate Diplomaに申込み、合格した。大学では1年間のコースで学び、2004年に修了。しかし、これは獣医免許取得を目的とするコースではない。ここからカナダで獣医となる第一歩が始まった。

 次は国家試験。「国家試験に受かるのには時間とお金がかかるんですよね。スムーズにいっても3年くらい」。まずはカナダの学生も受験する学科試験。それから、海外からの受験者は実地試験を受けなければならない。「手術をしたり、麻酔をかけたり、大動物や小動物を診たり、という実地テストがあるんです。その待ち時間がすごく長いんですよね」と振り返ってちょっと苦笑い。それでも無事合格。それからバンクーバーで開業する機会を得ることができた。

 

ウエストバンクーバー動物病院を開業  

 バンクーバーに来たきっかけは、仕事のチャンスがあったから。国家試験受験の準備中には、獣医としての仕事ができないため、獣医をサポートするテクニシャンとして働いていた。そんな時、知人経由でバンクーバーに就職する機会を得て移ってきた。その時に知り合ったのが現在のビジネスパートナー。紆余曲折がありその職場を2人で辞めることになったが、逆に開業するチャンスを得た。

 「職を探さなきゃと言っている時にこの病院が売りに出ていたんです」と水野さん。「この病院を初めて見て気に入ってしまったし、場所もいいので、条件がいいなと思ったのもあって、じゃあやってみるかと思い切って」決断を下したという。すでに獣医の免許も取得し、2011年8月に開業した。

 それから3年。医療サービス全般を扱っているが、入院やペットホテルも請け負っている。目指すのは動物の総合ケア施設。「一応、普通の町の動物病院なんですけども、目指しているのは、ひとつの病院で全てのことができるという施設。グルーミングもできるし、飼い主さんがお出かけするときは預けることもできるし、病気であれば入院もできるし」。診察、治療から、検査、入院、専門医への紹介、定期的ケア、さらにはホテルと、動物のことなら全て任せられる総合ケア施設を目指している。

  

 

ウエストバンクーバー動物病院

 

一年に1回は健康診断を

 病院を利用するのは、やはり犬と猫が最も多いという。来院理由で多いのは、下痢・嘔吐、デンタル(歯の問題)など。こうした問題が起こったとき、もしくは、起こさないためのアドバイスを聞いた。

 

① 最低でも一年に1回は健康診断を

 健康診断に来るのはとても大事なことです。日本の飼い主さんは、元気だからいいやって、何かないと来ないですね。よく言うのは、『うちの子、病院嫌いだからいい』って。病院嫌いだからこそ、来てもらって、慣らして、何かあったときに備えるのがいいんです。

 最近では、もっと予防しようよ、病気になる前に防ごうよ、そうすれば長生きできるよっていう考えが強くなってきています。例えば、毎年1回でも来てくれていれば、歯を見て歯石がすごく溜まっているから、歯そうのうろうになって、放っておくと歯を抜かなくてはいけなくなります、歯の麻酔をかけてきれいなクリーニングをすれば、歯を失わないですみますよ。それをまあいいから、いいからって、全然来ないでおくと3年経った頃には歯はボロボロで歯が一本もなくなってしまうということもあるわけです。もしくは、高齢になったら1回は血液検査をして問題ないよというのを確認した方がいいですね。

 

② 肥満と運動不足

 

猫は一般的に

 

       肥満になりやすく

 

犬は高齢化で

 

  運動不足になりがち

 

 肥満の猫ちゃんがものすごく多いんです。というのは、室内飼いでほとんど外に出ない。猫は14時間以上寝てる動物ですからね。それで、ご飯は大体がドライフード。ドライフードっていうのはポテトチップスみたいなもの。そのドライフードを山盛り一杯(エサ皿に)入れっぱなしで、なくなったら継ぎ足しということをしている方が結構多いんです。そうすると猫ちゃん、パクパク食べて、ブンブン太っていきます。きちっと、カップで量測って、一日2回与えるとか、猫じゃらしで遊んであげるとか、気を付けた方がいいですね。

 犬は、歳を取ってくるとお散歩にあまり行かないですね。割と高齢のワンちゃんは、高齢の飼い主さんっていう組み合わせが多いんです。そうすると、かわいいからおやついっぱいあげて、太ってくると動かなくなる。高齢で新陳代謝も悪くなってきます。それに、飼い主さんの中には、自分の犬が太っていること、言われるまで気づかない人がいるんですよね。そういうのでも、来てもらえば、体重測って、太ってますよ、お食事はカロリー控えめにというアドバイスができますね。

 

③動物のアレルギー

 アレルギーのペットがすごく増えてるんですよね。人間並みに。食事アレルギーもいっぱいいて、食事が合わなくていつも軟便なんですよねって、言う方もいます。お食事を変えたらガラッと変わりましたって言う方いっぱいいます。あとは、皮膚がかゆいというのも、お食事変えたらよくなるって子がいます。食事ってものすごく大事なんです。

 ノミアレルギー、ダニ、ハウスダストアレルギーとか、プラスチックが合わない、洗剤が合わない、カーペットが合わないなどといったことも関係してくるし、さっき言ったみたいに食事でも、チキンがダメ、ビーフがダメということもあります。 (アレルギーの場合は、食事療法も含め、いろいろな方法で改善策を見つけていくという)

 

 この仕事をやっていて良かったと思うときはとの質問に、「動物って壊れやすいというか、病気になってしまうと、具合が悪いとか自分で言えないんで、すごくみんな心配するんですね。それを治療して、治してあげて、すごく元気になったときに、動物だけではなくて飼い主さんも、よかったぁって喜んでくれるのがいいなぁと思うんです」と答えた。

 動物は自分で症状を話せないので、飼い主が気をつけてあげる必要がある。気づいたことがあれば日付と症状をメモしたり、早期発見早期治療、ペットが健康で長生きするためにも、定期健診には来てほしいと語った。

 

 

猫用ペットホテルの様子

  

 

入り口を入るとすぐに広くて明るい受付がある

 

 

West Vancouver Veterinary Hospital

住所:#101-100 Park Royal South, 

West Vancouver, BC, V7T 1A2

電話:604-913-8387

開業時間:月-金 8am〜7pm ・土/日 9am〜4pm

ウェブサイト:http://westvancouvervet.com

*パート2、V-26に掲載の広告もご覧ください。

  

(取材 三島直美)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。