●第1部●
「日本とカナダの技術融合が北米住宅市場を変える」

 

三井ホームカナダ社社長・蔵津洋さんの[講演概要]

 

 

三井ホームは、1974年、日本におけるツーバイフォー工法のオープン化の始まりとともにツーバイフォー住宅の普及を目指して歩んできた。1980年にカナダに駐在員事務所、1992年にBC州ラングレーに会社設立をし、1994年より工場を稼動させ、さらに、2012年隣地を取得し、現在の総面積は20エーカーとなった。  三井ホームカナダ社の事業内容は、①製材品等の調達②輸送・保管事業③木材の選別・加工④建設事業の4つに分類できる。

 

ツーバイフォーが生れた北米でさらなる高みを目指して

ツーバイフォーの住宅は北米生まれで、日本で導入されたのが40年前。三井ホームも同時にスタートし、日本人が求める住宅の品質基準、工期の短縮要求に応える工法を探求し、日本にツーバイフォー住宅を定着させてきた。工場で精度の高いパネルを製作し、現場で組み立てるパネル工法、そのノウハウをツーバイフォーの生まれ故郷のカナダでさらに磨きをかけ、建築事業を展開している。もともとカナダでも同じパネル工法があったが、現場へ持っていくと寸法が違っていたりで、現場で作り変えるなどのトラブルが生じていた、あまり評判の良くないビジネスモデルだった。そのためスタート時点では非常に苦労したが、小さな足がかりから実績を重ねることで三井ホームカナダ社のビジネスモデルが定着していったという。

 

BC州では、6階建ての木造中層集合住宅の建設も可能となり、また、「ウッドファースト法(木造建築を優先することで、森林事業の活性化と保護が目的)」が制定され三井ホームカナダ社にとって強い追い風となった。今では、学校、養護高齢者施設、中高層集合住宅などに、積極活用されるようになっている。そうした木造の大型物件の建設の可能性を日本と情報交換し、さらなる可能性を追求している。また、日本でも木造中高層集合住宅の建設が可能となり、日本各地で検討されはじめた。
また、建築構造躯体の一部である「トラス」の生産は、オーダーされるさまざまな寸法にきめ細かく対応し、しかも自動化された工場で短期間に納入できる仕組みを確立。カナダのみならずアメリカへの販路も広がってきたという。

 

カナダの植林事業へも積極的に参加

カナダの森は年間の伐採量を森林の年間成長量以下に抑えるなど、政府主導で厳しく管理。さらに植林を計画的に行うことで、豊かな森を守り、活性化している。そうした森林管理がなされているかどうかを第三者機関がチェックするシステムとなっていて、三井ホームは、森林認証制度のひとつであるCoC認証を取得。また、三井ホームとそのグループ企業はBC州で苗木の植林活動を長年、継続的に実施している。さらに、ノーザン・ブリティシュ・コロンビア大学での奨学金運営を行うなどの活動に積極参加。カナダ社会との絆を結び日本の技術力を活かし、豊かな森づくりで地球環境保全にも貢献している。

 

●第2部●
パネルディスカッション(要約)
「賢いリノベーションで家のバリューもUP」

 

 

第2部、パネルディスカッションの前に、「建友会」の世話人・伊藤氏のあいさつの中でカナダのリノベーションの年間工事費は2000年が20ビリオン、2012年が45ビリオンと非常に大きなマーケットで、年々成長していること。また、リノベーションにかけたコストの還元率(投資に対し)ベスト10は、①ペイント・装飾関連73%②キッチン72%③浴室68%④内装ペイント65%⑤床の交換60%⑥ドアの交換57%⑦ファミリールームの増設51%⑧暖炉の増設50%⑨地下室の改装49%⑩暖房機の交換48%--というデータの紹介があった。
それを受け、パネリストの三河慎修さん(ジェネラル・コントラクター)は、リノベーションの概要を次のように述べた。
①新築住宅とリノベーションの違いー工事業者は新築の場合ライセンスが必要だが、リノベーションには不要。集合住宅の場合、Strata Actの決まりがあり、勝手には工事ができないので注意が必要。
②リノベーションの種類-意匠(デザイン)、内装、機能、性能の向上が目的。
③一般的なリノベーションの流れ…お客様からの直接の問い合わせがある場合と建築士、デザイナーからの依頼がある場合があり、それぞれ手順が異なる。
④建築業者の選び方のポイント…知人、友人、デザイナー、建築士、建築関係者からの紹介。いずれにしても長くお付き合いできる業者を選び、コミュニケーションをよくとること。また、WCB,GeneralLiabilityなどの保険加入業者であることも重要。
次のパネリストは斉藤悦雄さん(設計・デザイン)。リノベーションの場合、「どこから手を付けていいのかわからない」という人が多い。デザイナーに相談するのがベスト。いろいろ話を聞いて、何をどう解決したほうがいいのかをクリアにし、予算との兼ね合いでのリノベーション計画を提案する。家の売却を前提でのリノベーションではなく、生活の質を上げるためのリノベーションを考えるべき。デザイナーは、単に見栄えの問題だけではなく、法律の安全性などの規定のもと設計するので安心。その点をきちんとクリアしたリノベーションであれば、売却の時もバリューが上がる。また、デザイナーは、依頼者とコントラクターとの間に立ち、コミュニケーションをスムースにし、ベストな目的を果たす役割もある。
次は、実際に売買するときの有利なリノベーションについて中谷太三さん(不動産・管理)も売却を前提にしたものではなく、生活の質の向上を目的にリノベーションを勧めた。それは、同時にバリューを下げないためにも必要になってくる。
①雨漏りは即、修繕の必要あり。チムニー周りや屋根面が合わさる谷の周辺に注意。 ②電気関係…古いヒューズタイプの配電盤は交換すること。コンセントはグラウンド付き、バスルームは漏電防止器付に交換。また、40年前後前の家にはアルミの電気配線が見られるが、スイッチやコンセントを変えるとき、アルミワイヤー対応のものに交換する。
③プラミング関係…30年前後の家の給水パイプにねずみ色のPVCパイプが使用されている場合があるが、ひびが入りやすいので交換したほうが良い。PEXと呼ばれるもの、あるいは銅管のプラミングが安定している。また、雨水の排水パイプに50年以前に使われていたドレンタイルは、つなぎ目のところに木の根が入り込んで詰まりの原因になるので、PVCパイプに交換する。
④オイルタンク…50年前後以前に、オイルタンクを埋没していたケースあるが、現在は撤去が義務付けられている。これは専門家にメタルディテクターで調べてもらう必要がある。など、建物の維持管理の専門家ならではのアドバイスがあった。

 

 

ランドスケープについて岡田伸平さんは、「住宅を装う庭は、住む人の心が表れる、美しい庭は、周囲の人にも心地いい。住宅と庭のバランスを考えて。住宅の改装に伴う庭の手入れでバリューアップ・・・庭は、通りからも見え、どんな家か直感的に推測できるため、美しくすることは欠かせないこと。また、美しい庭は隣近所へ伝播しやすく、その地域全体のバリューアップにもつながる」と、述べた。
最後に、パネルディスカッションの司会をつとめた吉武政治さんは、今後、省エネ、安全性(構造)、内装デザイン、快適性、健康性など高次元の付加価値のあるリノベーションが求められると、結んだ。 この後、会場からの質疑に移った。その多種多様な質問には、リノベーションへのニーズの高さ、同時に、「どこから、どう手を付けるか」という問題が浮き彫りとなった。

 

(取材 笹川守)

 

*「建友会」は、建築・建設及びその周辺産業に従事するプロフェッショナル集団。2012年11月カナダ・バンクーバーで設立。現在会員数50名。メンバー同士が切磋琢磨し、クライアントの要望に協力して総合的に対応できる集団を目指す。
*共催の日系4団体 日加商工会議所、企友会、バンクーバービジネス懇話会、建友会
*協力 日系女性起業家協会、日系ガーディナーズ協会

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