2019年12月5日 第49号

「バンクーバーファッションウィークのショーの最後に、デザイナーとしてランウェイに出た時、自然と笑みが浮かんでいた」と日本人デザイナーの丸澤正実さんは振り返る。丸澤さんは日本のテレビ局でドラマ衣装スタイリストとして活躍後、自分らしい服を作りたいという思いと海外で挑戦してみたいという意志から渡米。ニューヨークで日系マガジンのエディター兼スタイリストとしてインターンシップをしながら、デザイナーとしての感性を磨いていった。その後「MASAMI MARUSAWA」という自身のブランドを掲げ、SNSなどで活動を開始。バンクーバーで2019年10月7日から10月13日に行われた「vancouver fashion week SPRING/SUMMER 2020(S/S2020)」に日本人デザイナーとして参加した。日本のみならず、アメリカやカナダでも活躍の場を広げている丸澤さんに現在までの経緯や今後の目標などを聞いた。

 

︎ブランドロゴ

 

︎ポートレート

 

デザイナーになるまでのルーツ

 丸澤さんは東京の一般大学を卒業後、子どもの頃からの夢だったスタイリストを目指すために、服飾・ファッション専門学校の文化服飾学院(相原幸子学院長、渋谷区代々木) に再度入学して服飾の勉強に励んだ。卒業後、衣装や小道具のリースなどを行う衣装会社に就職し、フジテレビ系のドラマの衣装スタイリストとしてキャリアを伸ばした。メインスタイリストとしては、「最高のオヤコ」「一の悲劇」「いつかこの恋を思い出して泣いてしまう」などを手掛ける。

 スタイリストとして活躍していくうちに自分が思い描いた通りの服が見つからないことが多くなったという。自分の持つファッションの世界を表現するためにスタイリストの仕事を選んだものの、その表現方法に限界を感じ、「自分らしい服を作りたい」という思いが強くなったことから、デザイナーを目指すことを決めた。

 

NYでの活動について

 「デザイナーを目指すなら日本ではない場所で勝負してみたいと思った」と、丸澤さんは日本での仕事を退職後、ニューヨーク(NY)に渡る。ロンドンやパリなど、ファッションが有名な街は世界中にあるが、その中でもNYのファッション市場に心を強く惹かれた。「実力主義といわれる海外を舞台に、自分の力がどこまで通用するか試したかった」と当時の意欲を振り返る。NYに移った後は、英語とNYのファッションを学ぶため、現地の日系マガジンでエディター兼スタイリストとしてインターンシップに参加した。この経験やNYの街から得た感性を元に、独自のユニセックス服ブランド「MASAMI MARUSAWA」を立ち上げ、SNSでの発信を始めた。

 

バンクーバーファッション ウィークに参加して

 バンクーバーファッションウィークへの参加のきっかけはMASAMI MARUSAWAのホームページやSNSを見た主催者から声を掛けられたためだ。ビザの関係から日本に帰国し、就活中という節目のタイミングだったこともあり、デザイナーとして自分が今後やっていけるのかを確認し、ショーにチャレンジするのにちょうど良いタイミングだった。一方で帰国直後の参加となったため、参加資金が足りず、資金調達にクラウドファンディングも試した。結果は目標金額に満たなかったものの、たくさんの友人たちが援助してくれたことで、周囲に改めて感謝することができた。「今、自分のいる環境に気づけたことが一番の収穫だった」と振り返る。

 周りの助けも借りながら参加したバンクーバーファッションウィークは、ショー直後は「やりきった」という思いでいっぱいだった。ホテルに戻った後に振り返ると反省点が数え切れないほど出てきて、今では恥ずかしいくらいだというが、「今回の参加は間違いではなく、今の自分を表すショーとしては大成功だった」と自信をのぞかせた。

 

今後の活動の予定や目標は

 MASAMI MARUSAWAのデザインは音楽や映画、日常生活から影響を受けている。今回のバンクーバーのショーでは太陽の光から作り出される影のシルエットからインスピレーションを受け、影のシルエットが自分の好みになるアイテムをデザインした。

 デザインのテーマは「人に価値を与える服」だ。「服はあくまで自分を表現するためのツールでしかないと思うので、自分のデザインする服を着てもらう中で、着ている人自身が自己表現してもらえたら」と、着る人のことを常に意識しつつ、自身のデザインにもこだわる。特にMASAMI MARUSAWAのデザインはシンプルながら少しこだわりが入ったものが多く、そのこだわりに気づいてくれる人に着てもらえたらうれしいと話す。日本のファッション市場は縮小の一途をたどっており、丸澤さん自身も「誰もが似た服を着て生活をしていて無個性のよう」と感じているが、だからこそ「みんなが個性を表現できる社会になっていければいい」と常に前を向いている。2020年をめどにフリーマガジンとしてファッションマガジン雑誌を発行し、海外のように日本でもアートとしてのファッションがより浸透していくよう活動していく予定だ。

 今後は、何よりもMASAMI MARUSAWAのブランド化を第一目標に掲げる。今回バンクーバーで2020S/Sのショーを行なったこともあり、まずは商品を製作して2020年の春夏シーズンに販売できるよう活動を進めていく。また、NYで暮らす中で日本のファッションブランドの知名度の無さに驚くことが多く、日本人としてもっと世界に日本ブランドだと発信していきたいと思うようになったという。「MASAMI MARUSAWAを日本ブランドだと認知度を世界に広げていけたら良いなと思っています」と夢に向かって邁進し続けている。

 

▶丸澤さんのホームページはhttp://www.masamimarusawa.com/index.html

▶インスタグラムはhttps://www.instagram.com/masami_marusawa/?hl=ja
「デザイン画や製作過程をインスタグラム 、ツイッターなどに載せているので、のぞいてみてください!」とのこと。

(取材 猪木原由貴/写真提供 MASAMI MARUSAWA)

 

 

︎バンクーバーファッションウィーク1

 

︎バンクーバーファッションウィーク2

 

︎バンクーバーファッションウィーク3

 

︎バンクーバーファッションウィーク4

 

︎NYアーカイブ1

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。