アイデンティティ

乳幼児がいます。夫は英語、母親は日本語という環境の中で子供のアイデンティティというものをどうサポートしていったらいいのか?

参加者
小学校低学年では子供たちは誰とでも遊んでいるし、エスニックにこだわりはないと思います。

参加者
学校も親の文化について話し合ったり民族衣装を着て行く日を作ったり、マルチカルチャーを認識しているようですね。

野田先生
山崎豊子の『二つの祖国』という本があります。アメリカで育った日系人の物語です。北米はモザイク社会。カナダはそういう面で異なる人種の人たちが日本より過ごしやすいし、もう少しリラックスしてもいいと思います。「ハーフ」(半分半分)でなく「ダブル」(二つの文化を持つ)と教えてあげればいいんじゃないですか?

子供と日本語

子供と日本語で話すことによって、唯一自分のアイデンティティを守っていたように思う。一緒に日本語学校の宿題をやったり、しゃべったり。ほどよい束縛感が幸せだったのに、子供が勉強についていかれず日本語学校を辞めてしまった。

参加者
うちは学習に困難があったために日本語学校を2年生で辞めました。子供が日本語を学習することは親の希望、エゴであったかもしれないと思い、子供の状況を考慮してその思いを捨てました。

参加者
言葉だけでなく、日本昔話を読み聞かせたり文化に興味を持たせることで日本との接点を守っていけるのでは?
子供には日本語で接したいのに、夫がいると英語にしなければならない。

野田先生
一つの言葉をプライマリーに持つことが大切ですね。子供にとっては親がローモデル。日本語を持つことはアセットなのだと教えてあげてください。だんなさんとは子育てや言葉について、プロセスの中で合意しておいたほうがいいでしょう。

反抗期

9歳以降子供が反抗期になり、私も更年期障害になり、子供の扱いに困っている。

野田先生
思春期は日本ではどちらかと言えば内向的でひきこもりになったりしますが、カナダでは気持ちを外に出す傾向にありますね。外でつらいことがあったのを家で家族に当たり散らすというのは、逆に家はそれを出せる安全な場所と思っているからなんです。ある時期女の子は男親を避けるんですが、18歳くらいになるとまた戻ってきます。子供の旅立ちの時期だと思うんです。親子が仲良しすぎると子供は自立できなくなってしまうので、お母さんとのコンフリクトが大きくても、それはある意味で成長の過程と考えていいと思います。5、6歳くらいまではすごくかわいいわけで、そこで親はいい思いをさせてもらいましたよね、黄金時代ですから(笑)。そんな時があったことを考えれば、反抗期も乗り切れると思います。参加者—更年期障害は医者に相談して薬を出してもらうこともできるし、スポーツなどで自分を発散させる、家族が黙って見守るなど乗り切る方法はいろいろあると思います。

自分の自立

仕事をしながら子育てしている先輩お母さんをすごいと思う。

参加者
子供が離れていき主人がいなくなったら、自分で自立していかなければと思い始めたんです。社会に入っていけるよう後押ししてくれたのは上の子供でした。その分末の子には、上の子にしてあげたように日本語の勉強を見てあげることもあまりできませんが。「お母さん、末っ子には甘いんだから」と言いながら上の子が末っ子の面倒を見てくれるので助かります。

子どもとの歩み寄り

カウンセラーに見てもらうのは?

参加者
うちの子はADHDで大変な時期がありました。学校のカウンセラーというのは薬を飲ませておとなしくさせるとか、学校に都合の良い方に持っていく傾向があるみたいです。個人でカウンセラーに連れて行っていたら違う反応があったかもしれません。結局うちの子は家を出ましたが、1年後に戻ってきました。その時私も「ごめんね」と謝りました。今ではご飯を食べに行ったりする仲です。

褒める子育て

子供はカナダの学校で学び、英語の冗談を言い、カナダ人の夫との接点が日々多くなっていき、私(日本人の母親)との距離が広がっていくような気がしている。

参加者
子供が夫に接点を求めているのはいいと思います。母親が日本で育ったということは子供もわかってるはずですから。

野田先生
今思っている怒りとかフラストレーションを日本語の問題だと思いすぎていると思うんです。どんな親子でも女の子が13歳とか15歳になったとき、親とのコンフリクトがあるわけです。日本語で冗談を言って笑い合えていても、ぶつかり合いがあります。言葉が十分につながらないから自分はこうなっているのだと思い過ぎているのではないですか?

欧米では褒めて育てますね。でも「ここができてない」と日本で減点法で育った自分には褒めるのが難しいんです。

参加者
英語の方が言い回しがたくさんあって、褒め言葉がスムーズに出てくるような気がします。

野田先生
昔『パパは何でも知っている』というアメリカのテレビ番組が放送されていました。家族で話し合いをするわけですが、日本の文化とはずい分違うと感じましたね。日本の親というのは上からの目線で見てしまいますが、カナダでは親子が話し合うことが大切です。自分の感情レベルを知り、子供の意見を聞いてあげることも大事だと思います。

 

野田文隆博士

大正大学人間学部教授(臨床精神医学)。文化間精神医学の視点から、在外邦人のメンタルヘルスに関する臨床研究を続けている。UBC精神科Adjunct Professorを兼任。

 

国際結婚の会

年に3回ほどバンクーバーを訪れる精神科医、野田文隆先生を中心にワークショップを開催している。
詳しくはemailにて問い合わせのこと
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読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。