2019年9月26日 第39号

9月21日、バンクーバー仏教会ホールで、バンクーバー新報社主催による詩吟愛好者交流会が開かれた。バンクーバー周辺では現在、詩吟の3つの流派が活動しているが、この催しは流派を超えて詩吟を愛する人たちが交流することを目的としている。その他に、箏、尺八、三味線などの演奏、沖縄太鼓、日本舞踊、フラダンスとさまざまなパフォーマンスで彩られた。

︎詩吟の部に出場した皆さんと交流会開催関係者

日本の伝統芸術、詩吟を楽しむ

 今年も司会進行を務めたのは中条和可奈さんで、交流会実行委員長である伊東孝次さんが開会の辞を述べた後、バンクーバー新報社の津田佐江子社主があいさつした。

 今回は20人の吟士が出場し、和歌、漢詩、俳句などを朗詠した。詩吟は独特の節回しで詩の心を吟ずるものであるとされるが、現代では歌謡吟、童謡吟といった歌と合わせたものがあったり、書道や剣舞などと合わせたものがあるなど、多彩な展開をみせているという。また、詩吟は腹式呼吸でおこなうので美容と健康促進にも役立つといわれるが、出場した人たちの生き生きとした様子を見ていると、さもありなんといった感じである。今回出場した人の中に、数えで100歳を迎えるという村尾國畔(こくはん)さんがいた。村尾さんには100という数字が飾られたケーキが贈られ、祝福する声を受けながらろうそくを吹き消した。詩吟の総師範である村尾さんは、1880年代後半にブリティッシュ・コロンビア州スティーブストンに移住し、移民の功労者とされた工野儀兵衛さんを題材とした詩を吟じた。また、ハワイ在住の徳川景秀(けいしゅう)さんも出場、和歌の入った詩吟作品を吟じた。

 

多彩なパフォーマンスも見どころ

 詩吟の他にもいろいろなパフォーマンスが繰り広げられ、多彩な芸術祭のごとき午後のひとときとなった。千葉県成田市出身の伊藤将太さんは、成田市でおこなわれる獅子舞の曲を篠笛で演奏した。成谷百合子さん、高橋由紀子さん、キャッツ幸子さんによる箏と、伊藤敏雅さんと山本富蔵さんによる尺八の合奏では「みずうみの詩」など2曲が披露された。

 花城正美さん率いるバンクーバー沖縄太鼓の皆さんは、「神々の詩」など華やかで迫力ある演奏をおこない会場を盛り上げた。音羽流日本舞踊会は優雅な踊りを披露したほか、「よさこい鳴子踊り」では鳴子を打ち鳴らしながら軽快に踊った。アルスビン・リュウゼン・ラモスさんとノリ・アカギさんのユニットである節童(ぶしどう)は、三味線、三線、太鼓、尺八といくつもの和楽器を使いオリジナル曲を含めた3曲を演奏。「島唄」では来場者からボランティアを募って波の音などを表現する小道具で参加してもらい、沖縄の島の雰囲気を演出していた。

 今年も会を締めくくったのはワイレレ・ワイワイのフランダンス。ピンク、青、黄色、赤などの色とりどりの衣装に身を包んだダンサーの皆さんが、優美な踊りで7曲を披露した。会場からは声援や掛け声が飛び、心温まる雰囲気で幕を下ろした。

 約80人が来場、今回は若い人もたくさん訪れており、日本ではあまり見る機会のない日本の伝統芸能に触れることができたという声も聞かれた。

(取材 大島多紀子)

 

︎司会をそつなくこなした中条和可奈さん

 

︎ハワイから参加した徳川景秀さん

 

︎交流会実行委員長の伊東孝次さん。吟士名は伊東心鳳(しんほう)さん

 

︎招待吟として出場、詩吟の総師範である田並國詔(こくしょう)さん

 

︎数え年100歳となった村尾國畔さんも朗々と吟じ拍手喝さいを浴びた

 

︎100歳を祝うケーキを贈られた村尾國畔さん

 

︎箏と尺八の合奏。美しい調べに聴きほれる

 

︎清らかな音の篠笛を披露した伊藤将太さん

 

︎会場をわかせるバンクーバー沖縄太鼓

 

︎節童のダイナミックで心震わす演奏

 

︎音羽流のみなさんの美しい舞い

 

︎ワイレレ・ワイワイのフラダンス。優美な踊りに感嘆

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。